2011年11月30日水曜日

フロリダの赤いフリッカ パーキング

自宅保管時のフロリダのフリッカ。こんな姿は見たことがない。

狭いスペースに軽自動車をギリギリに停める日本人の姿をTVで観たことがあるが、正にそれに匹敵する技術だ。

隣の屋敷との間の幅8フィート+のスペース(フリッカのビームは8フィート)にトレイラーに乗せた艇を押して(または曳いて)入れるのだから相当なもの。








昔の家はバックヤードの隅にガレージがあり、家の横にそこまで続くドライブウェイがある。ここもドライブウェイ(だったところ)のようだ。

ドライブウェイにバイク、乗用車、ピックアップ・トラック、ランクルなどのSUV(RVに非ず)以外の物を停めたり置いたりするのを条例で禁止しているコミュニティーが多いが、ここはそうではないらしい。





人一人何とか潜り抜けられる位のスペースはありそうだ。







(写真はいずれもPSC製434艇中、番数艇名共に不明、1983年製のフリッカです。)
USヤフー・フリッカ・グループ

2011年11月29日火曜日

フロリダの赤いフリッカ

フロリダは高温多湿なところだが水温も高い。乗らない時はトレイラーに乗せて保管した方が船艇のブリスター防止になる。

ハルの赤いフリーボード(乾舷)はジェルコートではなく、ペイント塗装のようだ。






艇だけでなく、ダブル・アクスル(2車軸)のトレイラーのメンテも充分に見える。スタンドはステムに1本、両舷にそれぞれ5本づつと多数。

船艇塗料を塗って間もなく、一度も下架していない様子。







プロペラもペイントでプロテクト。

トランサムには孔が3個。






一番下はエンジン・イグゾースト、右上はホールディング・タンク兼ビルジ用と思うが、比較的新しいフィティングの付いたものはなんだろう。そしてコックピットからの排水口は何処だろう。

この艇は1983年製だが [261番] 以降の新型デッキ・モールドではなく、以前の古い型のモールドで出来ている。



故に排水口は [トランサム喫水線近く] (リンク先2枚目)にあると思ったのだが、実際には下の写真で分かるように新型モールド艇同様、コンパニオンウェイ下(後ろから2本目と3本目のスタンドの間)にある。

各ポートライトの周りに施した水色のテーピングが気になるが、メンテの途中らしい。





ライフラインに 『作業中につき、乗艇禁止』 のプラカードが見える。

PSC製初期フリッカに在ったステム上端両側の航海灯用の凹部は既にない。




PSC製2代目モールドで造ったハルだ。しかし、航海灯は84年型ではステム前面の上端に付いているが、この艇では86~87年頃以降の艇同様、プルピット・レイルに装着してある。

(写真はいずれもPSC製434艇中、番数艇名共に不明、1983年製のフリッカです。)
フリッカの歴史 (History of the Flicka)

2011年11月28日月曜日

スプリング・タイド

こちらでは大潮のことを Spring Tide と呼ぶ。スプリングは春のことではない。干満の差が大きく、潮に 『勢い』 があるという意味だ。

11月最終木曜日は Thanksgiving Day 。セレニティーでは毎年この日またはその週末に必ず船中泊し、良いシーズンだった事を艇に感謝することにしている。今年はこれと時を合わせ、太陽、月、地球の並びが良く、大潮だった。

満潮時近くの撮影。海抜0マーク点から+7.0フィート。















干潮時近く。海抜0マーク点から-1.7フィート。

その差8.7フィート(2.65m)だから、日本の太平洋側の海辺で育った人間なら別に驚かないだろう。しかし、メキシコのコルテズ海北端海域では干満差が20フィート(6m)を超す所もある。フローティング・ドック(日本で言うパンツーン・ドック)はありがたい。




(写真はいずれもPSC製434艇中295番 Serenity のドックのフィンガーから撮影。)
フリッカ・ホームページのフリッカ・データベース

2011年11月27日日曜日

PSC25 インテリア

スターボード側セッティーはバースとしても充分使える。

Vバースとの間にはロッカー。1983年以前のPSC製フリッカ中にはこれと [そっくりにアレンジ] した艇も見掛ける。

内装は小気味良い丁寧なティーク仕上げ。

この写真では良く分からないかも知れないが、シーリング(天井)のビニール製カバーやキャビン・ライトもPSC製フリッカと同じ物。






固定式ポートライトはティークのトリム付き。








左舷側には向かい合って座れるテーブル付きセッティー。

キャビン内の移動を考慮して、テーブルもセッティーもコンパニオンウェイ側が狭くなった変形。












いったいギャリーは何処にあるのかと思う人もいるだろう。実は上から2枚目の写真、バルクヘッドにある四角いカバーが引き出し式ギャリーなのだ。

昨日と本日の写真は今サンフランシスコの craigslist で売りに出ているPSC25。オーナーのオファーは$8,500 。他にも yachtworld.com などに比較的手頃な値段で出ているので興味のある人は [覗いてみる] と良い。引き出したギャリーの写真も見られる。




(写真はPSC製フリッカのスタイルや生産ノウハウの基礎ともなった1970年代後半のPSC25オリジナル・ヴァージョンの1艇です。)
現在のパシフィック・シークラフト社サイト

2011年11月26日土曜日

PSC 25

パシフィック・シークラフト25はトランサムが無く、バウもスターンも波を切る所謂ダブル・エンダー。

今日PSC25を取り上げたのは他でもない、この艇がPSC製フリッカの言わば父親だからだ。

デッキ、ハウス、コーミング等、PSC製フリッカの血統はこの艇に在る。





以前書いたように、PSCは1977年末ノー’スター製フリッカのハル・モールド(+ウェスタリーのデッキ・モールド)を受け継ぎ [フリッカ生産を開始] 。しかしそれと平行する形でハル、デッキともに自社モールドを製作、[1978年] にはそれによる造船をスタートさせた。

自社モールドによるフリッカはデッキ、スーパーストラクチャー(デッキの上に造られた全ての物)、キャビン内のレイアウト・造作全般に渡り、ビンガム・デザイン(自作艇、カスタム・オーダー艇、ノー’スター艇)とは一線を画す、独自のデザインで造られている。

ハウス、コンパニオンウェイ、コーミング等、まさにフリッカと同じぺディグリー。






フリッカはPSC生産ラインの3艇目。PSC25、マリア31に続き、フリッカをプロダクション艇として生産ラインに乗せるため、艇のデザイン細目を確定する技術責任者はビル・ルーサーだった。ビルは前2艇で培われたPSCのデザイン、スタイル、工法をフリッカに遺憾なく取り入れ、ハルそのもの以外のPSCフリッカのデザインを行ったのだ。(詳細は [こちら] の写真下のパラグラフ参照。)

斜め前方から見たところ。イルカの様なイメージまでそっくり。






PSC25は1975~6年のデビュー。デビュー時はこの艇の様にバウスプリットは無かったが、すぐに PSC25マークII としてバウスプリットを付けたヴァージョンも登場した。

バウスプリットの無いヴァージョンのスペックは [こちら] 。いずれにせよ、喫水長が21フィートなので、ハル・スピードは6.14ノット(フリッカは5.75ノット)と足は速い。ビームは8フィートで共通。ドラフト(喫水下)も3.2フィートと、3.25フィートのフリッカより僅かに浅いがほぼ同じ。デッキ長は24.5フィート(24フィート6インチ)と、20フィートのフリッカよりかなり長いものの、ダブル・エンダーであるためコックピット部分が小さく感じられ、フォアデッキを除き、フリッカより4.5フィートも長い艇のようには見えない。大きく異なるのはキャビン内部の高さ(頭を打つか否かと言う意味で通常ヘッドルームと呼ぶ)。これが約5フィートしかなく、フリッカより30㎝位低いのでキャビン内の移動が前屈みとなる。

ちなみにフル・ヘッドルームのある艇は通常27フィート艇以上であり、20フィート艇のフリッカに6フィート弱のヘッドルームがあるのは異例中の異例。

PSC25の図面を引いたのはPSC創業者の一人、ヘンリー・モーシャット。






ハウストップ・キャンバー(屋根の曲面)の度合い、前面の立ち角、キャビントップに配置されたフォアワード・ハッチ等、目に触れる部分だけを観ても、PSC製フリッカに受け継がれたものの多いことが分かる。













機会があればぜひ一度フリッカと乗り比べてみたい艇だ。

(写真はPSC製フリッカのスタイルや生産ノウハウの基礎ともなった1970年代後半のPSC25オリジナル・ヴァージョンの1艇です。)
1981年当時の全PSC艇のラインアップ (フリッカの後、1981年に4艇目としてオライオン27が追加されたが、その時オライオンのブローシュア内に全PSC艇が時代順にリストアップされた。)

2011年11月25日金曜日

ウィスコンシィンのPボート インテリア

室内は所謂オープン・レイアウト型で個室ヘッドは無い。否、この艇にはヘッドそのものが無いそうだ。(昔の小型艇ではワーク・ボート、プレジャー・ボートを問わず、無いものが殆どで、ヘッド = バケツだった。)

右舷側セッティーとVバース間にはサイドデッキとハウスを支えるバルクヘッドが延び、セッティーの上キャビン側壁にはハンドレイル(手摺り)が見える。

ソール(床)がVバース下からコンパニオンウェイ下まで段差なく続いているのはビンガム・デザインの特徴。




クッションやセイルバッグ等の上にブロンズ製金具を装着した昔流の木製ウィスカー・ポールが置いてある。

Vバース。
ハルの内張りはカーペットのようだがどうだろう。









両舷の棚がPSC製と比較してかなり小さいので圧迫感がなく、スペースは広く感じられるかも知れない。そのためかV字の凹部に渡す台形のフィラー・クッションは見当たらない。

尚、リングに記された艇名のピーボートは [Pea Boat] (エンドウ豆の莢 のボート)の洒落と思われる。元々バウとスターンが同形のダブル・エンダーの小船をそう呼ぶが、一般に人や荷物が一杯乗る小船のイメージからそう名付けたのかも知れない。莢を開く前の丸っこい形が似ているのかも。

整理してすっきりしたキャビン。

左舷側ギャリーの配置はノー’スター艇と同じくビンガム・デザイン。




アイスボックスとレンジ(コンロ)の位置がPSC製とは逆で、レンジがフォアに在る。

***

ウィスコンシン州ミルウォーキー在のこの艇は今魅力的な値段で売りに出ている。下のリンク先参照。

(写真はいずれもカスタム・オーダーによる1980年製フリッカ P Boat です。)
フリッカ・ホームページで今売りに出されているフリッカ一覧

2011年11月24日木曜日

ウィスコンシィンのPボート コックピット・コンパニオンウェイ周辺

コンパニオンウェイが下に平行に伸びる長方形になっているのは自作艇、カスタム・オーダー艇、ノー’スター製に見られるビンガム・デザインの特徴。

画面左下に顔を出しているコックピット・コーミングの前端に注目。








自作艇やノー’スター製では1枚板で仕切ってコーミングにしているものが多いが、この艇では南アフリカの [ピノッキオ] 同様、PSC製に似たファイバーグラス製の厚みのあるものになっている。

前から見たところ。












昨日この艇が船内機仕様であることを書いたが、現エンジンは2005年に新品に換装した1GM10。

エンジン・ダッシボード。

一見キャビン内と見まがいそうだが、コックピット内のようだ。




スターン、左舷側コーミングの下辺り。コーミングとサイドデッキの下のスペースがコックピット側に開いた空間になっているようだ。実際に乗艇して確認しないと分からない。自作艇やカスタム・オーダー艇、またPSC製でもオーナー・コンプリーション・ボートのインテリアなど、ファクトリー製と違っている部分は色々考えさせられる。

(写真はいずれもカスタム・オーダーによる1980年製フリッカ P Boat です。)
www.yachtworld.com キーワード欄に Flicka と入れてサーチ・ボタンをクリック。

2011年11月23日水曜日

ウィスコンシィンのPボート 外観

フォアデッキの大型のフォアワード・ハッチが目立つ。

ポートライトが全て閉め切り式なので室内換気の点からもこのサイズは助けになる。






キャビンサイド航海灯の位置、シュラウド用チェインプレイト2個のアレンジはノー’スター製 [ウィッシング・スター] と同じ。



この艇は船内機仕様。

アパチャー(プロペラ用のキールの切り込み)は自作艇やカスタム・オーダー艇、及びノー’スター製フリッカでは大体この形が標準。


PSC製は [Wの文字を横に] して丸みを付けた形。

* 註: 当初この艇をノー’スター製フリッカとし、シリーズ・タイトルも 『ウィスコンシィンのノー’スター・フリッカ』 としていましたが、本日この艇がプロの手で造られた1980年製のワン・オフであることが判明し、11月20日、22日の各記事のタイトルと内容を共に改訂しました。

(写真はいずれもカスタム・オーダーによる1980年製フリッカ P Boat です。)
フリッカ・ホームページの歴代カバー写真

2011年11月22日火曜日

ウィスコンシィンのPボート マスト・ステップ

一昨日のカスタム・オーダー艇

マストはやはりキャビントップに載せるデッキ・ステップ方式。







マストを受けるタバーナクルは [PSC製] と異なり、楕円形のリセプタクルが付いている。

楕円の外周をすっぽり覆う形でマストが立つ。









1980年製だが、艇の状態は極めて良好だ。

* 後日註: 当初この艇をノー’スター製フリッカとし、タイトルも 『ウィスコンシィンのノー’スター・フリッカ』 としていましたが、11月23日、この艇がプロの手で造られた1980年製のワン・オフであることが判明し、タイトル、内容、共に改訂しました。

(写真はいずれもカスタム・オーダーによる1980年製フリッカ P Boat です。)
フリッカ・パッセージのページ フリッカ各艇の長距離航行記録を載せるページ。(全6ページ、各ページ一番下の Next>> をクリック。)

2011年11月21日月曜日

ドック・ラインの解れ補修

まる4年経過したナイロン製ドック係留ライン。熱で溶解して解れ止めとしていたエンド部が解れ始めた。















どこから来るのか、岸辺から100m離れた海上のドックにも雑草が生える。特に冬の雨期には元気が良い。















ライン・エンドを再度熱処理で固めた後、ベター・ハーフがテグスを使って [セイルメイカーズ・フイッピング] "Sailmaker's Whipping" を施した。

補修したドックラインは全5本中4年物のみ計2本。加えて6年前の艇購入時に付いて来たアンカー・ロードも途中1ヶ所、細い縒り紐が1本だけ切れて2cm程解けている箇所があったが、未補修のままだったのでそこも同様に処理。

尚、針を使わないで行う普通のフイッピングは [こちら] (頭から0:27まで飛ばす = 0:27辺りから3種類の方法を分かりやすくビデオ表示)。どれでもひとつ覚えておくと便利。

セイルボートにはやることが無限と言って良い程あるので退屈しない。トリアージしてプライオリティーの高いものから順に片付けていく。

(写真はいずれもPSC製434艇中295番 Serenity 関連のものです。)
フリッカ・ブローシュア(14頁版)

2011年11月20日日曜日

ウィスコンシィンのPボート

昨日のノー’スター製フリッカ、ウィッシング・スターと良く似ているが、この艇は同じビンガムのデザインに基づき、オーナーがローカルの造船所にカスタム・ビルドしてもらったもの。 ハルは無論、デッキもファイバーグラスだ。

話しがずれるが、ノー’スター製と言えばデッキは木製が殆ど。しかし、015番のハルとデッキを購入し、後は全て自分で仕上げ、ミス (Myth) と名付けたオーナーによると [ミス] のデッキは木製ではなくファイバーグラスだという。ノー’スター製全20艇中最後の6艇が全てそうであったかは不明だが、ノー’スター製も末期になってパートナーのウェスタリーがモールドから起こしたファイバーグラス製デッキになっていたようだ。

ビンガム・デザインをそのまま使用しているのでフォアワード・ハッチはキャビントップではなくデッキにある。



スーパーストラクチャー(ハウス)前面にもポートライトを設置。バウスプリット両側にはティーク・グレイト(スノコ)のプラットフォーム。

圧巻なのはフリッカの象徴である葡萄の蔦のスクロールワーク。刻み込んだスクロールではなく木彫のレリーフ。スクロールに続くハル・ストライプもPSC製では刻み込んだように凹面になっているが、この艇では凸面のティーク製ラブ・ストレイクがハルのフリー・ボード(乾舷)をぐるっと取り巻き、重厚感のあるソールティーな仕上げになっている。

キャビン・サイドのポートライトは前2個がウィッシング・スターと同じ小型円形。後ろ1個は見ての通り、大型の台形。



この艇はライフライン用のスタンションも、バウとスターンのプルピット・レイルも無いのでシアーから上がすっきりしている。トップの写真で見る様にスパー(マスト、ブーム)はアルミ製でスループ・リグ。

* 後日註: 当初この艇をノー’スター製フリッカとし、タイトルも 『ウィスコンシィンのノー’スター・フリッカ』 としていましたが、11月23日、この艇がプロの手で造られた1980年製のワン・オフであることが判明し、タイトル、内容、共に改訂しました。

(写真はいずれもカスタム・オーダーによる1980年製フリッカ P Boat です。)
フリッカのリグ

2011年11月19日土曜日

ウィッシング・スター 復活

と言っても今日の写真は復活前のもの。 実は昨日まで取り上げていたメリーランド~テキサス間のICW航海を果たした男ケヴンが、フェロセメント・ハルのフリッカ、レンを自分の買値の$5,800で新オーナーに譲り渡した直後、このノー’スター製フリッカ [ウィッシング・スター] を驚くべき値段で購入したのだ。

ジブ、メイン共にセイル・カバーがなく、レイジーに放置された寂しい姿だが、復活の日は遠く無いと思われる。




過去数年間売りに出され、売主オファーは1年前に$10,000まで下がっていたが、ケヴンはこれを$3,000で購入した。トレイラー付き。自宅に運んでリストア出来る。

幸運は努力に付いて来る。時間をかけ気長にレイダーを駆使してターゲットに見合う艇を探し続け、ここぞという時に即交渉してまとめる。"Timing is everything" と言う言葉があるが、良い取引にはタイミングは無論、物件に関する知識や相手の立場を理解し敬う心も欠かせない。

ケヴンより早く$3,000で購入することを口約束していた別の男は買いそびれた。のらりくらりしてさらに値を下げさせようとしていたと言う。売主は東海岸への引越が迫っており、後から現れたものの自分なら今$3,000払うというケヴンの手に渡ったのだ。前フリッカ・オーナーのケヴンがこの艇の価値を正しく理解していた事は言うまでもない。

ケヴンはリストア完了後メキシコのコルテズ海までトレイラーで運び、そこから南行クルーズを始める積もりだという。

(写真はNor'Star製20艇中017番目 Wishing Star です。)
フリッカのスペック

2011年11月18日金曜日

レン ICW

ICW は [Intracoastal Waterway] の略。 レンはICWを通り、チェサピーク湾からテキサスまで3,900マイルを機帆走した。

河川、湖沼にはこのような泊地が方々にある。









運河にかかる橋。船舶航行時には左手にあるアームで引っ張り上げ、左岸に立ててしまう。





これは二分割して両側に立てる典型的なドロー・ブリッジ。

(隅田川の [勝鬨橋] 参照。)




前方に見える橋は橋桁が大型船舶航行にも支障の無い高さ。








レンはギャーフ・リグ・カッターでクラブ(ブーム)付きイナー・ジブ、メインのフットをブームに固定するライン・レイシング、キャビン・トップのマッシュルーム型ヴェント、シュラウドに渡した [ビレイング・ピン] 用ブリッジなど、艤装も味わい深い。

ICWは場所によっては大型船も通る。この写真は喫水の浅い貨物用バージ(台船)を押しながら行き交う2杯のタグボート。



レンはウェイク(曳き波)を避けるためタグの真後ろを機走中。

***

シングルハンドしたレンのオーナーはレンをメリーランドで購入。購入価格は$5,800。しかし9月末テキサスに到着してすぐネット・オークションに出し、約10日後には全くの同価格で新しいオーナーに引き渡している。3ヶ月の船旅を最小限の出費で楽しめた訳だ。

仮にメリーランドからテキサスまでフリッカを陸送したら$3,500はかかる。テキサスの新オーナーにとっても手元に舞い込んだ幸運だった。ウィン・ウィン・シテュエイション。先日触れたように新オーナーはメキシコの南、カリブ海に面した国ベリーズへ航海するという。1974年製、そろそろ38歳ながら今でも幸せを運んでいる。

(写真はいずれも Ryan Marine の1974年製フリッカ、Wren です。)
日本のヤフー・フリッカ・グループ

2011年11月17日木曜日

レン オン・ザ・ハード

メリーランドからテキサスへのシングルハンドに備えて船底の点検と塗料の塗布が終わった時のレン。

マスト・シュラウド用チェインプレイト各舷3個の配置は等間隔のPSC製スループと異なる。





南アフリカのフリッカに [これに似た配置] が見られる艇もある。ちなみにPSC製ギャーフ (リンク先で Gaff タブをクリック) ではチェインプレイトが2個しかない。

航海灯は両舷とも一等前のシュラウドに装着されている。

トランサム右舷側、喫水近くにあるハルIDのインプリント。








IDは先日書いたようにRYAF20010374 (RYAはビルダー・コード = Ryan Marine、F20はフリッカ、01はハル番号、1974年3月にハル完工)。

デザインが1972年に発表されて以来自作艇も多く造られたが、ノー’スターやPSCによるファクトリー製の前に、この艇のように地元の造船所がオーナーの依頼を受けて作ったフリッカもある。

IDの頭3文字のビルダー・コードは米コースト・ガードが各ビルダーに指定配布する。バックヤード・ビルダーの場合ハル登録は自分の州で行い、州コードの後にZを付けたものがビルダー・コードになる(例CFZ)。尚、ハルIDは車のVIN同様、その艇のIDであり、例えば州の船籍登録番号(車のナンバー・プレートのようなもの、例CF1234XY)とは違い、一生変わらない。

トランサム左舷にあるスルーハルは船内機(1GM)の排気・排水用だろう。







船底のスルーハルはコックピットからの排水口と思われる。右舷側にも同じ場所に同じスルーハルがある。エンジン冷却水取水口は [右舷側のどこかにあるはず]

ボブステイにはチェインを使用。











いよいよ下架して航海へ。











余談だが、このトラヴェリフト(移動式クレーン)の中古品(最大許容荷重6万ポンド=27トン版)が現在サンフランシスコのcraigslistで売りに出ている。$4700。

(写真はいずれも Ryan Marine の1974年製フリッカ、Wren です。)
USヤフー・フリッカ・グループ

2011年11月16日水曜日

レン インテリア

今年の夏メリーランドからテキサスまでシングルハンド航海した [レン] の写真がもっと出て来た。

ブルース・ビンガム設計のままのキャビントップのキャンバー(円弧)。後のPSC製よりも丸いのでキャビン内に立った時の頭の上のスペース(ヘッドルーム)がPSC製に比べ2~3インチは高い。

ブリッジ・デッキは無く、コンパニオンウェイの切り込みが深い。また個室ヘッドのないオープン・レイアウト型である。この2点は初期PSC製に踏襲された。



しかし、これらの写真を観ているとPSCがPSC25とマリア(31フィート)で培って来た生産技術をもって、そもそもバックヤード・ビルダーを念頭に設計されたフリッカを、完全に次元の異なるファイバーグラス製プロダクション艇としてアップデートし、言わば見事に再誕生させたことに思いが馳せる。






人間の結婚と同じで、PSCとフリッカは出逢うべくして出逢ったのかも知れない。その仲を取り持ったのはビンガムの製図マンとして、またノー’スターでもフリッカ建造のエンジニアとして働いていたビル・ルーサーである。PSCが独自モールドによるフリッカ生産をするにあたりデッキ、コックピット、キャビン・インテリア等、ハルのラインズ(基本設計)以外の全てを設計したのは他ならぬ [この男] (リンク先写真2枚目)だ。ハルにしても、ステム上端両隣にある航海灯のデザイン、スターン両舷の小型スクロールワーク、デッキとの接合用のヒレなど、細かいデザインも全てビルの仕事。まさにフリッカをPSC造船ラインに乗せた立役者だ。

その後主にマーケティング上の理由からブリッジ・デッキ、個室ヘッド、手摺り型コンプレッション・ポストの導入や、ステム上部、コックピット・ソール、コンパニオンウェイ下周り等のデザイン・アップデートが行われた。個室ヘッドはPSCの創始者・オーナー・デザイナーであるヘンリー・モーシラットの設計であることは判っているが、その他はヘンリー、ビルどちらによるものか分からない。

いずれにしろフリッカの大成功はこのようなPSCのコミットメント無しでは在り得なかった。一方、PSCは数年に渡りフリッカ1艇から次の1艇へとフリッカだけで食い繋いでいたというファクトリー関係者の証言があり 、PSCの存続はフリッカ無しではあり得なかった。

尚、バックヤード・ビルド(自作艇)からPSC製プロダクション艇への過渡期にノー’スター製フリッカ20艇が存在するが、ハルがファイバーグラスになったものの艇のデザインは全て今日の写真のフリッカと同じだ。またノー’スター製の殆どはハルだけのキット・ボートとしてオーナーに渡され、オーナーが仕上げている。協力会社のウエスタリーが完成させたファクトリー艇でもデッキやキャビンは木製が殆どで、正に過渡期のフリッカの呼び名にふさわしい。

1978年~1983年頃と思われる。

(写真はいずれも Ryan Marine の1974年製フリッカ、Wren です。)
フリッカの歴史 (History of the Flicka)

2011年11月15日火曜日

インテリア・ティーク

セレニティーでは室内のティークが積年のオイル塗布で黒ずんで来て、室内が暗くなって来ているので、この冬にリフレッシュすることにした。

例えば下の写真、壁につけたティークのオーガナイザーは3年前に作ったもの(これにはオイルではなくセトールが塗ってある)。壁、真ん中の明るいエリアは新艇時から22年間鏡に覆われていたが、5年前にその鏡を取り外した部分。以降一年に一回オイルを塗布して来た。外の暗い部分は27年間オイルを塗り重ねて来た部分。いかに黒ずんでいるか分かると思う。

この暗い部分を少なくとも鏡に被われていたところと同じ位明るくしたい。







部分的にお湯や消毒用アルコールで落とすことも試してみたが、結局まず軽くサンディングで表面のオイルを落とすことにした。



アセトンなどを使う人もいるがなるべく化学薬品は使いたくない。

試しに上部のみサンディングしてみた。一回目でこの程度明るくなる。これを後2~3回繰り返す。





室内全体を終わらせるには4~5週末はかかると思う。

アイスボックスの蓋。室内ではずっと黒ずんで見える。熱いものを置いた円形その他の焦げ目も付いて汚らしい。




これも他の室内ティーク同様にサンディング。










エンジン・ルームのカバーも同様に処理。










無論、コンパニオンウェイの基盤および梯子も。

(この時点ではこの二つはまだ手付かず。)




塗り込められた積年のオイルと垢を落とした後、ティーク・クリーナーとブラシで洗浄、さらに温水とブラシでそのクリーナーを流して下準備が終わる。

ちなみにティークに塗るために市販されている 『ティーク・オイル』 なるものはミネラル・オイル又はリンシード・オイルやタング・オイル、レモン・オイル等の植物オイルとその他の成分を混合したもので、元来ティークに含まれている自然のティーク・オイルではない。

下準備完了後エピファンを4層塗る予定。(エピファンやニス塗りはサンディングを含んで何層も塗るので時間がかかる。ファクトリーが室内のティークをオイル仕上げにしていたのは実は仕上げの手間を省くためだったのではないかと思う。)

エピファンなら毎年オイルを塗る必要もなく、湿気や埃など環境からもティークを守ってくれる。見た目も明るい室内になりそうで楽しみだ。

(写真はいずれもPSC製434艇中295番 Serenity です。)
www.yachtworld.com キーワード欄に Flicka と入れてサーチ・ボタンをクリック。