2009年2月28日土曜日

ドロップ・ボード

差し板、つまりキャビンへの入り口、コンパニオンウェイにドロップしてはめる板のことだが、通常扱いやすいように3、4枚にカットしてあり、その一枚々々が昔の洗濯板に似ているので、俗称ウォッシ・ボードとも言う。

この写真ではちょっと見づらいが1990年代のフリッカではこの艇のようにファクトリーものは4枚式がスタンダード。



こちらは1984年のファクトリー製3枚式。真ん中のルーヴァーと呼ばれる百葉箱の壁みたいな通風口は後で仕込んだもの。



差し板は波に打たれても平気なように厚みがあり、結構重いものだ。脱着作業やキャビン内の収納は4枚の方が楽、ということで90年代に入り上の写真の4枚式になったのだろう。(注:1983年後期にデッキ・モールドが新型になり上2枚の写真の様にブリッジ・デッキが造り込まれた。それまでの旧型モールドによる艇はブリッジ・デッキがない分コンパニオンウェイが深く、その分をカバーするためドロップ・ボードも4枚になっている。)

これは合板で作った1枚式。プレキシ・グラス製も良く見かける。1枚式はデイセイリング主体の艇には便利。厚みのない合板やプレキシ・グラスは重さもさほど感じない。脱着も実は1枚の方が手っ取り早い。ただキャビン内の置き場所はVバースに限られる。また、外洋に出かけるには不都合。荒天時、どうしても出入りしなくてはいけなくて開けた場合、スターンから不意に打ちつけた海水がキャビンに入る危険性がある。


アメリカ発の外洋レースでは、荒天時コックピットに入って来た海水でボードが流されないよう、各ボードに細いラインを装着しそのラインをキャビン内に結びつけるなど、流出防止対策を施していること、というルールもある。昔ファストネットというヨットレースで荒天下多数のヨットが沈没し犠牲者を出したが、殆どの艇の沈没原因がコンパニオンウェイからキャビン内への浸水だったという調査結果が出て以来、ドロップ・ボードの流出防止策は常識になっている。

遠く外洋に出る時は、真ん中の写真のルーヴァー付きの板も、荒天に備えてルーヴァーのないソリッドな板の控えを用意しておく必要がある。

(写真上はPSC製434艇中、1993年製番数艇名未確認のフリッカ、下2枚は295番目 Serenity です。)
USヤフー!フリッカ・グループ

2009年2月27日金曜日

ジブとステイスルでカッター仕様

ポートサイドからの風はどのくらいだろう。8-9ノットか。ハインド・クォーターから吹いているブロードリーチのように見える。うねりはないようだが波は1-2フィートはありそうだ。一般に写真になると海面は実際より平べったく見えるから、もう少しあるかも知れない。

純粋のカッターではないが、ツイン・ヘッドスル。フォアのヘッドスルはワーキング・ジブ、イナー・ヘッドスルはステイスル。


ステイスル・ステイがある訳ではなく、ステイスルのラフにワイヤーが入れてあるワイヤー・ラフ・ステイスルのようだ。

ステイスル用のラニング・バックステイは見当たらない。実際マルコーニ・リグのフリッカではマスト前方に付けられたステイスル・ハルヤードを通すアイが、ちょうど2本のロウアー・シュラウド(lower shrouds)の取り付け場所と殆ど同じ高さにあるので、通常のセイリングではラナーが無くても何の問題もないようだ。(ギャーフ・リグではステイスル用のラニング・バックステイも必要。)













スターン・プルピットが一段式であること、またエンジンの真上にあるコックピット・ハッチの形などから1983年以降の80年代生まれであることが分かるが、新型デッキ・モールドになってすぐの1983年製だそうだ。

この艇は、オーナーがPSC31 Mariah(PSC創業者ヘンリー・モーシラット設計)に乗り換えるため売却したが、それを後悔し、2年後同艇がまた売りに出された時、自分で即買い戻したことでも知られている。3枚式ドロップ・ボードの真ん中の一枚に付けた鳥の装飾がオーナーの愛着を物語っているようだ。

(写真はいずれもPSC製434艇中272番目 Ladre / Paradox / Ladre です。)
USヤフー!フリッカ・グループ

2009年2月26日木曜日

ウィンフィドゥラー

このフリッカは去る8月この [ブログ初日] に登場した艇だ。

日にちは違うが、係留ラインの取り方からして、恐らく同じムーアリングに係留中の写真。














だが今日はドジャーの話。見ての通り、このフリッカのドジャーはコックピット前半分も完全にカバーするフル・ドジャー。









SF湾で20ノットの風で艇速5.8ノットのビームリーチ、3フィートの波がウェザー側、進行方向2時~2時半くらいの角度から来ると、時たまスプレイではなくバシャ~ンとスプラッシを被る。その時スプラッシが何処から入って来るかと言うと、ちょうどコックピット・コーミングが前方でカーブしたあたり、つまりサイドデッキの終わりの部分から、スターン・プルピットの前の脚のあたりまでの空間からだ。

まわりくどくなったが、このドジャーならそういうスプラッシを殆ど返してくれそうだ。ドライなコックピットは良い。ただ、メインシートがミッドブームにセットしてある我が 『セレニティ』 では一工夫しないと、こういう大型ドジャーは付けられない。

その他のフリッカ・ドジャーの話は [こちら] にも。

(写真はいずれもPSC製434艇中373番目 Windfiddler です。)
フリッカ・ホームページのフリッカ登録データベース

2009年2月25日水曜日

タバーナクルのバッキング・プレート

このフリッカは以前にも出てきたレイク・タホの 『サリー・アン』

セイルボートのマストはハウスのデッキを突き抜け、キャビン内のソール(床)も突き抜け、キールの上に起ててある、いわゆる 「キールにステップ」 したマストが多い。しかしマストを倒してトレイラーで引っ張ることのできるフリッカのマストは通常デッキの上に起ててある 「デッキにステップしたマスト」。














ちょうどキャビントップのマストの起つ場所周辺は幅25cmくらいにわたり、キャビン内側に右舷から左舷まで分厚いマリン・プライウッド製コアにファイバーグラスを積層した頑強な補強材がアーチ状に組み込まれている。

キャビントップでアルミ製マストをがっちり受け止めているのがタバーナクルと呼ばれるステンレス製の板。強いて言えば両舷に翼を立て、前方後方にも短い翼を開いた形をしている。(この写真は別のフリッカ 『セレニティー』 のもので、見てのとおりシングルハンダーズ・パッケージの一貫としてハルヤードやリーフィング・ライン用のブロックが装着してある。しかし原型は皆基本的に同じ。)



サリー・アンのオーナーは3、4年前、自艇購入直後に大幅なメンテを行い、タバーナクルのリベッド(付け直し)作業も行った。その際キャビンの内張りを開けたみた。デッキ上から通された4本の取り付けボルトはいずれもファイバーグラスに直に小さなウォッシャーを置いてナット締めしてある。














クリートなどとちがい、上に載ったマストからの重量が上からコンプレス(圧縮)する形でプレートをキャビントップに押し付けるだけだからこれで良いのかも知れない。

しかし同艇ではせっかくの機会なのでこの様に厚いアルミ合金製バッキング・プレートを自作して取り付けた。



これでまた心配しなくても良い事がひとつ増えた、という事だろう。

(写真は上から2枚目を除いていずれもPSC製434艇中294番目、1984年製の Sally Ann、上から2枚目は295番目 Serenity です。)
フリッカ・ホームページのフリッカ登録データベース

2009年2月24日火曜日

もう一艇のフリッカと言う名のフリッカ - インテリア

これは一昨日の自作フリッカ 『フリッカ』。

キャビントップと側壁のエッジにぐるりとティークのトリミングが付けてある。ナイス・タッチ。




今日はキャビン内を覗いてみよう。

PSC製フリッカとちがい、マストがキャビントップを通ってそのままキールにステップされている。






キャビントップのキャンバー(円弧)の度合いも後のPSC製よりきつく、図面発表当時のデザインを反映している。キャビン前面にもポートライトが付けてあるのは前方の様子を見るというより、マストでキャビン内が窮屈に見えないように灯り取りの目的の方が大きいのかも知れない。ヘッドがVバースにあるオープン・レイアウト型キャビンにしてあるのもスペース感を確保するためだろう。

マストがキールにステップされているから、マストの通っている部分のアーチがPSC製ほど頑丈に補強されてはいない。


それでもフレーム一本、プラス各舷2本づつのニー(knee)でサポートされている。上の2枚目の写真で分かるように、ニーの下には当然ながら両舷ともバルクヘッドが当てられサイドデッキを支えている。

左舷ギャリーのコックピット側はアイスボックス。クォーターバースがない。当時の他の自作艇の例から言って、右舷にもないだろう。

草創期のフリッカでは両舷ともコックピット・シートの下がロッカー(ラザレット)になっており、コックピットからアクセスできる収納スペースとして使われているのが一般的。

それにしても木工の得意な人なら、フリッカのデッキ、ハウス、キャビンなど、一度は取り組んでみたいプロジェクトではないだろうか。

(写真はいずれも1973年製の自作フリッカ Flicka です。)
USヤフー!フリッカ・グループ

2009年2月23日月曜日

ウィンドラス

大型艇と違い、フリッカにアンカーを揚げるウィンドラスがあったほうが良いか否か、はオーナーたちの間でも意見の分かれるところだ。無い方が良いという人は、フォアデッキでつまづく原因にならないか、シートが絡んで面倒じゃないか、デッキ下のモーター用のスペースも含めてウィンドラスを取り付ける空間が十分ないのではないかなど、疑問を持っている。そういう意見はどちらかと言うとシンプル・イズ・ベスト派で、まだ老け込んでいない人たちに多い。

このフリッカのフォアデッキに見えるものは何だろう。ウィンドラスだろうか。














このフリッカは上の写真とは別艇。付けるとすればこの位置しかないだろう。







歳をとってから付けて良かったという声もある。特に気象条件の良くない時にアンカーのハンドリングを楽に安全にしたい人にはウィンドラスがあると良いかも知れない。

またどうせ付けるのならウィンチ・ハンドル1回転で約1ft しか巻けない手動式ではなく電動式が良いだろう。電動ウィンドラスがあればちょいとオカでもチェックして来るかという時アンカーを揚げる時の手間を考えず気楽に行ける様になったという経験談もある。

投錨時はクラッチを外して重力で落とし、揚げる時はコックピットからスイッチ一つで操作できる電動式は確かに便利に違いない。



(写真上はPSC製434艇中042番目 Rusalka、下2枚は番数艇名不明のフリッカです。)
USヤフー!フリッカ・グループ

2009年2月22日日曜日

もう一艇のフリッカと言う名のフリッカ

以前出てきた [フリッカと言う名のフリッカ] はPSC製297番、1984年製。

だがそのPSC製 『フリッカ』 の他に、東海岸チェサピーク湾のバージニア州、メリーランド州沿岸をホームにしている、別の 『フリッカ』 と言う名のフリッカがいることが判った。フリッカの図面が発表された翌年、1973年製の自作艇で、実はこの艇も [以前に登場] している。

バランスのとれた実に美しいギャーフ・リグのフリッカだ。

バウ、スターンともプルピットがない。スタンションやライフラインもない。




バウスプリットはPSC製のスタンダードより1ft以上は長いだろう。長いバウスプリットはヘッスル面積を大きくしパフォーマンスも向上させるが、見た目も美しい。

PSC製でもフリッカ・ホームページの製作兼管理人のアンガス・ベアーズの 『キャラウェイ』 のように長い特製バウスプリットに付け替えた艇もある。

フリッカのラインの美しさ。









ボブステイとウィスカー・ステイは昔ながらのチェインを使っている。

1973年製ということは72-73年の間、都合6号にわたって雑誌 『ラダー』 に連載された図面と製作法を見ながら、読者たちによって毎号発行と殆ど同時進行で造られた艇のひとつかも知れない。

(写真はいずれも1973年製の自作フリッカ Flicka です。)
USヤフー!フリッカ・グループ

2009年2月21日土曜日

コックピットをフルサイズ・ベッドに

今から夏の夜にコックピットで眠るための準備をしている男がシアトルにいる。コックピット一面をベッドにするアイデア。

このようにコンフォーター(掛け布団)を掛け、その上にクッションを置くとなかなかホーミィーな感じ。





シングル、ツイン、フルサイズ、クイーン、キング、カリフォルニア・キングとベッドの幅は25-30cm くらいづつ広がっていくが、これはフルサイズくらいの大きさ。

両側のコックピット・シートには長いコックピット・クッション、真ん中部分にはクォーター・バースのクッションを置いてシーツを被せたところ。



クッションを置く前はこういう感じ。無論、キーになるのは真ん中部分の厚さ1インチのプラットフォーム(板)。




前方はブリッジ・デッキに掛け、後方部分は幅約1.5cm の出っ張り部分に乗せている。プラットフォームの材料費15ドルで出来た夏用ベッドのベース。

注: 幅はフルサイズとは言え、フリッカのコックピット内部の長さは約5フィート (150cm) なので大人が脚を伸ばして横になることは難しい。

(写真はいずれもPSC製434艇中340番目 Toucan です。)
トゥーカン・ホームページ

2009年2月20日金曜日

正円形ポートのフリッカ

フリッカのポート(窓)は通常長方形か楕円形。ノー’スター製や自作艇には円形ポートも見られるが、PSC製ではまず無い。これはPSCファクトリー・スペックが長方形か楕円形だったからに他ならない。

このPSC製フリッカのポートはまがいもない円形。










理由も時期も分からないが、以前のオーナーがオリジナルの長方形ポートから円形ものに換装したらしい。形が違うから木のコアやファイバーグラスの積層で開口部をおおかた塞ぎ、カットし直す手間が掛かったはず。それを押して円形にしたのだから、自分のフリッカを愛していたオーナーの姿が偲ばれる。

これが長方形ポート時代の同艇。ポートは黒色に見える。プラスチック製だったのだろうか。







昔から船に使われて来た円形ポートは、クラシックな雰囲気のフリッカには長方形より合っているのかも知れない。





尚、ネットでブロンズ製ポートを検索しても出てくるのは長方形か円形のみ。楕円形はなかなか見つからない。ファクトリーがファウンドリーに特注するのだろう。フリッカには楕円形ポートが似合うという人が結構多い。後期になって軒並み長方形になってしまったのは残念な気がする。

(写真はいずれもPSC製434艇中、番数不明 Vesper です。)
USヤフー!フリッカ・グループ

2009年2月19日木曜日

ホール・ソウ = 孔を開ける鋸


ソーラーヴェント装着用に購入した直径3.75インチ()の円形ノコ。








パワー・ドリルの軸にドリル・ビット同様に取り付ける。というより真ん中の芯はドリル・ビットそのもので、孔を開ける時の中心点になる。

開ける孔の中心点にドリル・ビットの先端を当てドリルのスイッチを入れる。















中心点がドリルで固定されると周りの円の部分のノコがプレキシ・グラスの表面に当たって掘削が開始される。
 
かなり慎重に進めたが、上の写真からこの状態(貫通して下に落ちた状態)になるまでものの10秒もかからない。













下に落ちた削除部分。

















ソーラーヴェント。












プレキシ・グラス表面の孔の周りの接着部をヤスリがけするなど細かいステップを除いて大まかに言うと、開いた孔に基部をはめて3M5200で接着、トップの部分はその基部にネジ止めする。その後キャビン内部から基部のシリンダーにゴム製のプロテクター(別売り)を付けて作業完了。

 後日註: 当初4.75インチと書いていたが3.75インチの誤り。悪しからず。

(写真はいずれもPSC製434艇中295番目、1984年製の Serenity です。)
Flicka20_Japan グループ

2009年2月18日水曜日

トレイラー・ヒッチのイクステンション

[ローンチング・ランプ] をバックで下ってトレイラーに載せたフリッカを水面に降ろす時、トレイラーはできるだけ水の中へ、だけどトラックは水の中には入れたくない、という人が考えたアイデア。

上のリンク先ページに、トレイラーとトラック間にトウ・ストラップというタイをつけてスペースを稼ぐアイデアも出てきたが、下の写真はトレイラーのセンターラインにある牽引用ヒッチの横に艇のローンチング及び回収時のみ使用する専用ヒッチをつけた例。

その特製ヒッチがこのようにフリッカの艇長分くらい伸びるようになっている。







通常はトレイラーの上に収納。











牽引する時はもともとトレイラーについてきた牽引用のヒッチを使う。








以前にも書いたがトレイラーで引っ張って移動することを50ノット(スピード)の真上りという人たちがいる。アリゾナやニューメキシコの長大な砂漠も横断。目的地に着いた時のことを考えると、何百マイルという長距離にも臆する事はないのだろう。

(写真はいずれもPSC製434艇中058番目、1978年製の Sparky です。)
USヤフー!フリッカ・グループ

2009年2月17日火曜日

ヴォランズ

北米で俗にパシフィック・ノースウェストと呼ぶと、一般にシアトルやカナダのバンクーバーのある地域。当地域にはフリッカを始め、多数のPSC製セイルボートのオーナーも住んでいる。毎年艇種を問わずPSC製セイルボートが集まるランデブーも催されることでも知られている。

夏のバケーション・シーズンにはヨット、パワーボートを問わず、バンクーバーのさらに北、リアス式海岸、というよりフィヨルドの多い地域へ長期クルーズに出かける人が多い。

この滝はプリンセス・ルイーザ・インレット (このリンク先ページの下にギャラリーあり) にあるチャターボックスと呼ばれるクルーザーたちのハイライト、目当てのスポットのひとつだ。

フィヨルドの深い入り江、インレットへの出入りは潮汐表を良く見てタイミングを捉えないと、ちょうどサンフランシスコのゴールデン・ゲイト同様、滞留してしまう。




プリンセス・ルイーザ・インレットはジャーヴィス・インレットという大きなインレットから奥で分かれるインレットのひとつ。インレットの両側に迫ってそそりたつ美しい山々の間を抜け、奥へ奥へと進むと一番奥まった所にあるこの滝に行き着く。到達するまでの経路は無論、ここでのアンカリングはまさに別天地に来たようで、忘れられない思い出になるという。

こちらはずっと南、シアトルの西北、サン・フアン諸島のスチュアート島。ムーアリング(常設アンカー)に係留中。





太平洋や大西洋の横断だけがヨットの醍醐味ではない。比較的近場でも海路のアクセスしかない場所を訪れるのは楽しい。いや、どんな場所でも海路でのアクセスは格別だ。

(写真はいずれもPSC製434艇中番数不明、1983年製の Volans です。)
フリッカ・ホームページ

2009年2月16日月曜日

ツウィン・ジブズ - ジブの2枚張り

ツウィン・ジブズ、ジブの双子、つまり両舷に張ったジブ。昔からクルーザーの間で使われて来た。

スピネイカーもアシメトリカル(クルージング)スピネイカーもいらない。2枚のジブのハンクを下から交互にステイにセットして行き、一本のハルヤードで吊る。貿易風をスターンから受けるダウンウィンド・セイリングのクルージングには持って来い。この写真ではウィスカー・ポールは使っていないが、両ジブ共にポールで張り出すと、より効果的。





ポイントを変える必要に迫られたら、どちらかの1枚を反対側の舷に引き、2枚のジブを重ねる。

ハンク式のジブだから出来る、と思うのは早い。最近はファーリング・ジブでもツウィン張りができるようになった。例は [こちらを参照] 。尚、2006年のサンフランシスコ・ハワイ間のシングルハンド・トランズパック・レースでバークリー在住のクリス・ヒューマンがデイナ24で使った150%のツウィン・ジェノアズは、自分で撮影した [カイト・キャムのビデオ] に収録され良く知られている。このツウィンズもラフを共有したファーリング式だ。

(写真はPSC製434艇中058番目、1978年製の Sparky です。)
USヤフー!フリッカ・グループ

2009年2月15日日曜日

タラッサ

フリッカの自作艇は1970年代の後半に相当数造られた。ハルはフェロ・セメント(鉄筋コンクリート)、デッキとハウスは木造が多い。

この艇は一見自作艇だが、ハルはPSC製の002番、ファイバーグラス製だ。






ハウスはフリッカ設計者ビンガムのキャンバー(トップの円弧)のきついデザインでも、後のPSCのファクトリー・デザインでもなく、自分なりにアダプトしたと思える角型。デッキ、ハウス、インテリアは自作のように見える。

しかしPSCのハルは当初ノー’スターから受け継いだモールドで造っていたし、もしかしたらPSCが生産を始めた当初はノー’スター製フリッカのデッキとスーパーストラクチャーを担当していたウェスタリー社の関与もまだあったのかも知れない。1977年末頃のノー’スターからPSCへの過渡期についてはまだはっきりと分かっていないことが多い。

フリッカ・デザインの源流、ニューイングランド地方のニューポート・ボート、さもありなん、と思わせる姿。


上架するのか降ろしたばかりなのか、トラべルリフトのベルトが所定位置についたまま。






サイド・デッキが広いのはビンガムの当初のデザインどおり。目を引くのはバンプキン。船首に付いたバウスプリットでフォアステイを船外に伸ばしているように、船尾にバンプキンを付け、バックステイを後ろに伸ばしている。これによりメインスルの面積拡大が可能。ブームがPSCスタンダードより1~2フィートは長い。リグはカターでマストからはヤンキー用のイナー・ヘッドステイと同じ高さのところにラニング・バックステイが付いている。

ディーゼルの計器盤はコンパニオンウェイの下にある。









エンジンは Volvo MD1、オーナーは5年ほど前 MD2010 か Westerbeke 12C wp に換装したい旨書いていたが、どうなっただろうか。この写真は2005年撮影。

尚、もともとは太平洋側ワシントン州の艇だったが、その後オーナーの変遷、転居により、フロリダ、テキサス、ロード・アイランドと場所を変えた。




フリッカ・デザインの源、ニューポート・ボートのふるさと、ロード・アイランド州に辿り着いたのは偶然だろうか。

(写真はPSC製434艇中002番目、1977年製の Thalassa です。)
USヤフー!フリッカ・グループ

2009年2月14日土曜日

エリス

揚げたセイルがかろうじて形になっている程の微風。帆走というよりは漂っていると言った方が正確だろうか。

ここは海でも湖でもなく、オハイオ・リバーという河。流れは2ノットくらいあるのかも知れない。潮流のある湖、といった感じだろう。

大河は昔から交通に使われて来た。大西洋往復や世界一周をして来た帆船たちすらテームズ河をロンドンまで上り、アドミラルティに帰着報告した。







ドラフト(水面下の深さ)が1メートルもないフリッカはこのような大河はもちろん、浅瀬の多い海域でも活動範囲が広い。


(写真はPSC製434艇中420番目 Elise です。)
フリッカ登録データベースにある同艇の紹介

2009年2月13日金曜日

バウスプリット・カラー

バウスプリット・カラー (Bowsprit Collar) とでも呼ぶべきだろう。形は四角だが、要するにバウスプリットをかしめる『輪』だ。

この写真中、バウスプリット先端近くにあるステンレススチールの四角い輪が本題のカラーだ。それよりも前にあるブロンズ製クランズ・アイアンのはまっている部分は円材になっているが、このカラーの部分から後ろは角材になっている。

そもそもクランズ・アイアン自体がバウスプリットの木材が裂けないよう、木をかしめる形で先端部分にがっしりとはめられている物。



このようなカラーは [他のフリッカでも見た事がない] 。 おそらく長年の雨や湿気で腐ってしまったバウスプリットを交換した際、スプリットを合板方式でつくり、四角い部分にも締め具が欲しいと思って付けたのだろう。円材から角材に変わるところの角材の前面の四隅もカバーしているのかも知れない。

尚、クランズ・アイアンからはフォアステイ、ボブステイ、ウィスカー・ステイx2、計4本のステイが上下左右に伸びている。フォアステイの前に ASPIN(アシメトリカル・スピネイカー)のフットの高さを調整するタック・ラインを通すブロックを付けることもある。

(写真はPSC製434艇中297番目 Flicka です。)
フリッカ・ホームページのフリッカ登録データベース

2009年2月12日木曜日

トレイラー

アメリカでフリッカ・オーナーの何%がトレイラーに載せて引っ張っているのか分からないが、決して少なくない。USヤフー!フリッカ・グループでもトレイラーやそれを引くトラックの事など良く話題に上る。

何処へでも好きな所へ引っ張って行けるのがトレイラー・セイリングの良いところ。





北へ南へアメリカを縦断したり、家の近くの海や湖まで短距離を引いたり、色々だが、マリーナに保管するより船底の管理は楽だろう。

フリッカの場合、最低6000ポンドの重量を運ぶため、安全性の面からダブル・アクスル(2軸4輪)のトレイラーが必要。

今日の写真4枚、それぞれメーカーが違うようだが、いずれもダブル・アクスルなのは偶然ではない。

船底塗料も係留用と陸置き用とは別物。係留用は上架などで24時間も空気に触れると効果を失ってしまうが、陸置き(トレイラー)用は平気。









これは脚立の様なハシゴの付いた珍しいトレイラー。







この位の大きさだったら言わば日本の普通免許だけでOK。牽引免許は不要。東海岸、西海岸など地域ごとに良く知られたメーカーがいくつかあり、値段は新品で5000-6000ドルほど。中古の場合2500ドルくらいからあるようだ。

(写真はPSC製434艇中、上から294番目 Sally Ann、番数艇名未確認の1993年製、続いて326番目 Cat's Paw、420番目 Elise です。)
USヤフー!フリッカ・グループ

2009年2月11日水曜日

ローンチング・ランプ

アメリカのマリーナや公園で良く見かけるローンチング・ランプ。トレイラーに載せて引っ張って来た艇を、バックで海や湖にトレイラーごと入れて、艇を浮かす。浮いた艇をさらに沖方向(通常このようにそれ専用のドックがある)に移動させ係留し、空になったトレイラーを駐車場へ引き上げる。

これはカリフォルニアとネヴァダにまたがる大きな湖レイク・タホにあるランプ。





長期間にわたる大掛かりなメンテ・改修を済ませた新オーナーが2006年初夏、初めて艇を浮かせたところ。

昔、日本の漁港は揚場以外大した岸壁はなく、周りがずっとこういうランプになっているところが多かった。(今でも小さい漁港はそうだと思う。)船艇は満潮時に上げ下げする。干満の差の大きい港や広い後背地に恵まれない所では坂がこの写真よりも急なところが多い。

幼少時、地元の漁港に大きな鯨がランプに引き揚げられ、その山のような鯨に登った大人5、6人が、二人挽きの大型鋸などを使って皮とブラバー(脂肪層)を切り剥がし、手際よく解体していく様子を見に行ったことがある。あの鯨は長さだけでもこのフリッカの4倍以上はあったと思う。

(写真はPSC製434艇中、294番目 Sally Ann です。)
フリッカ・ホームページの記事 "Launching a Flicka"
(註)この記事ではトレイラーをトラックのヒッチからはずし、トラックとトレイラーに付けたトウ・ストラップを使ってできるだけトレイラーを深い所まで移動させるテクニックが書かれている。トレイラーが深い所にあれば、艇のローンチ、回収も楽だ。