この艇は1981年製であることが分かった。
1984~85年頃までのPSC製フリッカのハルIDはトランサム左舷下部に刻印されている。
PCS201750681とある。PCSはコースト・ガードが指定したパシフィック・シークラフトの正式な略称(艇のオーナーたちは通常PSCと略している)。20はフリッカ、175はハル番号。1981年6月にハルが完成したことが分かる(デッキや内装、艤装など全ての完成年月ではない)。
***
ファクトリー出荷時から今日まで30年超、初代オーナーから現オーナーまで何人のセイラーの手を経て来たか分からないが、この艇のユニークな箇所を見て行こう。
1981年製でも航海灯がステム上部ではなくレイルに付いている。
バウスプリットの上にスルーボルトで留めた長いSS板が見える。無論デッキに重なる部分は他のフリッカ同様バウスプリットをデッキに留めるために使用しているが、デッキの先に突き出た部分は下側にもSS板を当て、バウスプリットをサンドウィッチしている。補強の意味らしい。
プラットフォーム左舷先端にはブロックがある。これはジブを降ろす作業をコックピットから出来るようにジブ(ヘッスル)のヘッドの孔に付けたライン(ダウシング・ライン)のターニング・ブロックかも知れない。
この目的のブロックはラインをフォアステイに平行に引いてセイルを降ろし易くするため通常 [ステイの足元に付ける]。
マスト・ステップ(タバーナクル)のトップ部分にU字型金具(ベイル)が見える。タバーナクルとマストを水平に貫通して留めているスルーボルトとナットを利用して装着している。ベイルはソフト・タイプのブームヴァングをセットするのに便利。ベイルが無い場合タバーナクルのアフトのフィンに在る孔を利用する。
この艇にシート・トラックは無い。通常それが設置されている場所にはブロックが1個。
セイル・シェイプ調整のためブロックの付いたカーをトラック上で前後に移動させることは出来ないが、このように最初からワーキング・ジブ用に最適化した場所にブロックを固定しておけば不都合は無いはず。
又、この艇のショア・パワー(陸電)用インレットはコーミングの上。アフト・スタンションには側脚が付いている(PSCフリッカでは通常側脚の無いタイプがスタンダード)。コーミングの側壁にある孔の用途は不詳。
ジェノア、スピン、ドリフター等大型ヘッスル用のブロックもトラックではなくスターン・プルピット・レイルに固定。
パワー・インレットの前後に装着したSS製フィティング。ドジャーやビマイニ用と思われる。
(写真はいずれもPSC製434艇中175番 Shiva です。)
⇒ フリッカ・ホームページのフリッカ・データベース