差し板、つまりキャビンへの入り口、コンパニオンウェイにドロップしてはめる板のことだが、通常扱いやすいように3、4枚にカットしてあり、その一枚々々が昔の洗濯板に似ているので、俗称ウォッシ・ボードとも言う。
この写真ではちょっと見づらいが1990年代のフリッカではこの艇のようにファクトリーものは4枚式がスタンダード。
こちらは1984年のファクトリー製3枚式。真ん中のルーヴァーと呼ばれる百葉箱の壁みたいな通風口は後で仕込んだもの。
差し板は波に打たれても平気なように厚みがあり、結構重いものだ。脱着作業やキャビン内の収納は4枚の方が楽、ということで90年代に入り上の写真の4枚式になったのだろう。(注:1983年後期にデッキ・モールドが新型になり上2枚の写真の様にブリッジ・デッキが造り込まれた。それまでの旧型モールドによる艇はブリッジ・デッキがない分コンパニオンウェイが深く、その分をカバーするためドロップ・ボードも4枚になっている。)
これは合板で作った1枚式。プレキシ・グラス製も良く見かける。1枚式はデイセイリング主体の艇には便利。厚みのない合板やプレキシ・グラスは重さもさほど感じない。脱着も実は1枚の方が手っ取り早い。ただキャビン内の置き場所はVバースに限られる。また、外洋に出かけるには不都合。荒天時、どうしても出入りしなくてはいけなくて開けた場合、スターンから不意に打ちつけた海水がキャビンに入る危険性がある。
アメリカ発の外洋レースでは、荒天時コックピットに入って来た海水でボードが流されないよう、各ボードに細いラインを装着しそのラインをキャビン内に結びつけるなど、流出防止対策を施していること、というルールもある。昔ファストネットというヨットレースで荒天下多数のヨットが沈没し犠牲者を出したが、殆どの艇の沈没原因がコンパニオンウェイからキャビン内への浸水だったという調査結果が出て以来、ドロップ・ボードの流出防止策は常識になっている。
遠く外洋に出る時は、真ん中の写真のルーヴァー付きの板も、荒天に備えてルーヴァーのないソリッドな板の控えを用意しておく必要がある。
(写真上はPSC製434艇中、1993年製番数艇名未確認のフリッカ、下2枚は295番目 Serenity です。)
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