2011年1月18日火曜日

燃料の旅 (軽油供給ライン + リターン・ライン)

1983年後期以降の船内機仕様フリッカでは燃料タンクがフォアピークのチェイン・ロッカーのすぐ後ろ、Vバースの下にある。

ディーゼル・エンジンはエンジンに送り込まれた燃料の軽油すべてを噴霧・圧縮して燃やすのではなく、いくらかは燃料タンクに戻すようになっている。

燃料はインジェクターと呼ばれるジェット噴射器によってアトムの噴霧となる。噴霧にするにはこのインジェクターのノズルを通る燃料が高圧力でなければならない。ディーゼル・エンジンではインジェクター・ポンプからインジェクターへ充分な圧力の燃料を確実に供給できるように、噴霧して燃やす以上の燃料を送り込んでいる。噴霧しなかった分はインジェクターからリターン・ラインを通してタンクに戻される。

Vバース下のタンク。下のホースが供給ライン。上がリターン・ライン。







両方のラインがエンジン・ルームまで平行して走っている。

まずVバース下、燃料タンク後ろの収納スペースの天井を這ってスターン(船尾)方向へ。





スターボード(右舷)側に曲がって隣りの収納スペースの壁の中へ。

下が供給、上がリターン・ライン。




隣りの収納スペースの壁を上から見たところ。

画面左がバウ(船首)側=タンク側。




ラインはキャビン側の壁と収納スペース側の壁の間を走っているので見えない。

壁と壁の間からスターボード側セッティー下の収納スペースに出る。







このスペースには内壁がないのでラインも露出されている。








セッティー下のスペースからコンパニオンウェイ下のスペースへ直行。

コンパニオンウェイ下のスペースに出て直角に曲がり、艇をポート(左舷)方向へ横切る。





ポート側でアスターン(スターン方向)に向きを変える。

真ん中に見えるのは供給ライン開閉用のコック。


コンパニオンウェイ下のスペースからアスターンに向かったラインはクォーター・バース下、クォーター・バースのインボード側合板壁と清水タンクの間を走る。

清水タンクをクリアーしたところで壁を抜け、エンジン・ルーム側に向かう。







ついにエンジン・ルームに出て来た。

(キャビン側からスターン方向を見たところ。)




エンジン・ルームを上から見たところ。










孔から出た供給ラインは外付け燃料フィルター、さらにその横にある外付け燃料ポンプに接続。

ポンプを出ると緩いカーブを描きながらエンジン・ルームをスターボード側へ横断。






横断したらエンジンのスターボード側をバウ方向へ。

そこでやっとエンジンに接続。接続先はエンジン本体に付いている燃料ポンプ。

燃料はポンプからエンジン本体に付いている燃料フィルター(画面左端、赤いコードの下に見える物体)に送られる。





フィルターを通過した燃料はエンジン・スターボード側のパイプを通って画面上部に見えるインジェクター・ポンプへ。




そこからポンプ上部に接続されたパイプを通り、エンジンのポート側(画面左側)へ。

パイプはオルタネイター(発電機)の上を画面右から左へ跨いでインジェクター下部に接続されている。





燃料はこのインジェクターで噴射されシリンダー内で燃焼するものとインジェクターを通過してリターンラインに入る余剰分に分かれる。余剰分はインジェクターのトップに装着されたリターン・ラインに入る。リターン・ラインはエンジン・ルームの壁に開けられた孔の中に入り、先に見たルートを逆に辿って燃料タンクに至る。

***

PSC製フリッカは最後の434番艇でも造船から既に13年目。未だ燃料ラインを換装したことの無い艇では、燃料タンク内の清掃と共に供給ラインとリターン・ラインの全てを早めに新品に交換した方が良いだろう。

(写真はいずれもPSC製434艇中295番 Serenity です。)
フリッカ・パッセージのページ フリッカ各艇の長距離航行記録を載せるページ。(全6ページ、各ページ一番下の Next>> をクリック。)