ディーゼル・エンジンはエンジンに送り込まれた燃料の軽油すべてを噴霧・圧縮して燃やすのではなく、いくらかは燃料タンクに戻すようになっている。
燃料はインジェクターと呼ばれるジェット噴射器によってアトムの噴霧となる。噴霧にするにはこのインジェクターのノズルを通る燃料が高圧力でなければならない。ディーゼル・エンジンではインジェクター・ポンプからインジェクターへ充分な圧力の燃料を確実に供給できるように、噴霧して燃やす以上の燃料を送り込んでいる。噴霧しなかった分はインジェクターからリターン・ラインを通してタンクに戻される。
両方のラインがエンジン・ルームまで平行して走っている。
下が供給、上がリターン・ライン。
画面左がバウ(船首)側=タンク側。
ラインはキャビン側の壁と収納スペース側の壁の間を走っているので見えない。
セッティー下のスペースからコンパニオンウェイ下のスペースへ直行。
真ん中に見えるのは供給ライン開閉用のコック。
コンパニオンウェイ下のスペースからアスターンに向かったラインはクォーター・バース下、クォーター・バースのインボード側合板壁と清水タンクの間を走る。
(キャビン側からスターン方向を見たところ。)
孔から出た供給ラインは外付け燃料フィルター、さらにその横にある外付け燃料ポンプに接続。
そこでやっとエンジンに接続。接続先はエンジン本体に付いている燃料ポンプ。
燃料はポンプからエンジン本体に付いている燃料フィルター(画面左端、赤いコードの下に見える物体)に送られる。
そこからポンプ上部に接続されたパイプを通り、エンジンのポート側(画面左側)へ。
燃料はこのインジェクターで噴射されシリンダー内で燃焼するものとインジェクターを通過してリターンラインに入る余剰分に分かれる。余剰分はインジェクターのトップに装着されたリターン・ラインに入る。リターン・ラインはエンジン・ルームの壁に開けられた孔の中に入り、先に見たルートを逆に辿って燃料タンクに至る。
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PSC製フリッカは最後の434番艇でも造船から既に13年目。未だ燃料ラインを換装したことの無い艇では、燃料タンク内の清掃と共に供給ラインとリターン・ラインの全てを早めに新品に交換した方が良いだろう。
(写真はいずれもPSC製434艇中295番 Serenity です。)
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