写真の奥のヨットは無視して、手前の艇を見て欲しい。これはメンテのためバウスプリットを外し、ハルとデッキの接合部に被せたティークのレールも外したフリッカだ。
左右の舷ともバウから後方へカーブを描いて伸びているシアーが高さ約2cmのブルワークスを形成しているのが分かる。
ハルとデッキの接合部はファイバーグラス製ヨットの造船上、一目で設計の良し悪しが分かる場所のひとつ。いくつか方法があるが、フリッカではPSCの他の艇と同様、垂直に伸びたハルの天辺から内側に向け、ファイバーグラスのヒレが5㎝ほど水平に伸びている。
一方、デッキの方は端に階段が一段出来たように、水平のデッキから垂直に上へ約2cm伸び、また90度曲がって、外へ水平に5cmほど伸びている。そのハルとデッキ双方の幅5cm部分が重なった場所が写真に見えるブルワークスだ。
お互いの5㎝ほど伸びたヒレを合わせて、ちょうど容器のフタでも被せるように、ハルにデッキがピタッと乗る。重なった接合部にはエポキシなどの接着材が水漏れ防止のため隙間なくふんだんに付けてあり、さらにネジではなく、デッキ(上)側からボルトを通し、ハルの内(下)側からウォッシャーをはさんでナットで留めてある。これでハルとデッキは一体化した状態になる。クルージング艇に最適の頑丈な造りだ。
この接合部断面のイメージは80年代のフリッカ・ブローシュア(パンフレット)では [9ページ]、90年代のブローシュアでは [7ページ] の右端に掲載されている。
前者はパシフィック・シークラフト(PSC)の創設者たちがオーナーとして頑張っていた時代のブローシュアで表紙・裏表紙を入れて全14ページ。当時の本社ファクトリーのアドレスはロサンジェルス近郊のサンタ・アナ。
後者はファクトリー拡張のため近くのフラトンに移ってから造り直したもの。PSC31、34、37、デイナ、などが多く造られ、フリッカは完全にPSCの脇役になっていた頃だが、ページ数は8ページに減ったものの、フリッカはまだファクトリーのビジネス・プランにしっかり入っていた。
20フィートの小型艇を中・大型艇を作るような手間をかけて造ったため、生産効率が悪く、売値が高くなり客が離れてしまった。(特に80年代中ごろからファクトリーによる完成品しか売らなくなったのが響いたのかも知れない。)
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余談だが、この写真では [以前話に出てきた] マスト・ステップのタバーナクルが、一番手前にはっきり写っている。
(写真はPSC製434艇中、366番目 Scout です。)
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