まずこの2枚の写真を見て欲しい。
場所はコンパニオンウェイの下(ハシゴをはずし、ビルジへのアクセスのカバーをはずしてある)。
ハルに開いていた3つの孔(スルーハル)は左上がエンジン冷却水の取水口、その下と右側の孔はコックピットからの排水の出口だったところ。
新オーナーはエンジンを換載するのに合わせ、これら3つのスルーハルを後部へ移動させ、このスペースはエンジン始動用のバッテリーを置くスペースにするのだという。
これが新しいコックピット・ドレイン(排水)の経路だ。ここに見えるのは、コックピットのポート側の排水口に付けられたチューブ。チューブ自体をファイバーグラスでラップしてカチカチにしてある。ホースの先はそのままポート側に開けた新しいスルーハルにファイバーグラスで固定してある。シーコックはない。本人はこれで頑丈なものが出来たと満足しているようだ。
が、このアレンジには問題がある。
通常、1983年頃以降のフリッカではコックピット・ドレイン(排水)の経路は [このリンク先] (上から2番目の写真)のようになっている。チューブが交差している点に注目。(写真はクリックして拡大すると見やすい)。
つまり、スターボード側コックピット・ドレインの水はチューブを通ってポート側のスルーハルから艇外へ排出され、ポート側のコックピット・ドレインの水はスターボード側のスルーハルから排出される仕掛けになっている。
これは他でもない、艇がヒールした時、スルーハルから入った海水が逆流してコックピットに噴出するのを防止するためだ。
この工夫により、例えば艇がポート側にヒールする時は、スルーハルから入った海水がコックピットに噴出すヒール角度になる前に、スターボード側のスルーハルが海上に出てしまうのだ。だからコックピットは艇がヒールしてもドライに保てる。
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この改造艇のオーナーは自艇を改善したと思っているのかも知れないが、これでは改悪だ。艇がヒールすると水がコックピットにどんどん入ってくる。しかもスルーハルのシーコックもなくして、ファイバーグラスで管を直結してあるから、浸水を防ぐには木のプラグ(栓)をコックピットの孔に差し込むしかない。
セイリングしないパワーボートとして使うのならまだしも、はたして自分のやっていることが理解できているのか疑問だ。
本人宛てに要点だけ書いて報告しておいたが、大事に至る前に(少なくともコックピットが水浸しになる前に)理解して修正してくれればと思う。
(写真はいずれもPSC製434艇中366番目、Scout です。)
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