ヘビー・ディスプレイスメント(重排水量)型のハル、頑丈なつくりのフリッカは、軽いレース艇とはコンセプトの違う艇だ。安全性が高く、丈夫で、多くの食料や水などの荷物を積んで遠洋航海のできる外洋艇だ。だからと言って、すべてのフリッカが南太平洋やカリブ海を航海しているわけではない。他の様々なデザインのセイルボートと同様、海、湖、大河など、どこにでも見られる。この艇はオーナーが最初から遠くへ行くことは考えず、デイ・セイリング(日帰りセイリング)のために購入したようだ。
バウスプリットはあるが、プルピットはない。スタンチョンもライフラインもない。スターン・プルピットもない。
1981年製。自分のセイリングの楽しみ方に不必要と感じたものは一切付けなかったと見える。無論キャビンがあるから20フィートのオープン・ボートなどと比べるとデイ・セイラーだとしても、居住性は比べ物にならない。1、2泊のウィークエンダーと言った方が正確かも知れない。
キャビンはヘッドがVバースにあるオープン・レイアウト型。サイドデッキ下の棚にも転落防止用の木のレールがないなど、シンプル。
実はこの艇はオーナー・コンプリーション・ボート(キット・ボート)。ハル、デッキ、ラダーが組み立てられたところでオーナーに引き渡された。とは言え、キャビンはギャリー、Vバース、セッティー、クォーター・バースなどを含むイナー・ライナーが既に造り込まれていた。その残りをオーナーが自宅近くのプロにオーダーして仕上げたものという。
良く見ると、ギャリー・トップ周りのトリミング、シンクやアイスボックス外側(サイドデッキ下)のカボード、ドロップ・リーフ式テーブル、Vバース正面の扉など、ファクトリー・フィニッシではない部分が分かる。
ポート(窓)は両舷とも前の二つは締め切り式で、後ろの大きいものだけが開閉式。またこの時代の艇にはマスト・サポートのアーチの下にポールがないのが普通。この締め切り式楕円形ポートと四角いポールに関しては、ファクトリーでのオプションだったのか、オーナーの希望によるカスタマイズだったのか、はっきり分からない。
(写真はPSC製434艇中136番目 Ocean Gypsy です。)
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