2年前(2008年1月)、SFベイエリアで US$3000 で売りに出され、2、3日で買い手のついたフリッカ。かなりカスタマイズされたユニークなフリッカだ。
超特価だったのはコックピットをなくし、デッキをフラットにした改造が一番の原因と思われる。
もともと普通のマルコーニ・リグのスループだったという。改造は初代もしくは2代目オーナーの手によるものらしい。フラットにしたデッキの下は大人二人がゆっくり横になれるバースになっている。
こうやって見るとまるでディンギーだ。年寄りには無理なような気がする。しかし、リグも特製だから、ヒール角もさほどではなかったのかも知れない。コーミングの上に設けたホールダーはブロンズ製金具に分厚い板。実に頑丈なものだ。
写真が小さくて見づらいがこれが当時出された広告。セイルはラグセイル (lugsail) 一枚のみ。マストはガーフ・リグのマストよりもっと低い。日本でも昭和30年代初期までは漁村に行くと、この手の帆を揚げ、長い魯(ろ)も付いた小さな漁船が見られた。
例え他人の目に奇異に映ることがあっても、デッキを上げてバースを作り、ラグセイル・リグに仕立てたオーナーにとっては、自分のセイリング・スタイル、セイリング・ライフに合った理想のヨットだったのだろう。
ラグセイル・リグのマストにはサポート用のステイもシュラウドも要らない。セイルの揚げ下げもリーフも簡単で、乗り手に優しいセイルだ。
ヘッスルの面積を大きくして帆走能力をあげるためのバウスプリットも不要。バウに装着されているのは大型バウ・ローラーだ。
デッキを上げるだけでも大変な労力と費用。コーミング上のホールダーにしても、このバウ・ローラーにしても、パーツも造作も生半可なものではない。改造したオーナーは明らかに自分のしていることの意味をしっかり心得ていた経験豊かなセイラーだったに違いない。この広告で売りに出したオーナー(改造したオーナーの次の次のオーナー)によると、タックさせるのに時間がかかる以外、スムースなセイリングが出来るという。改造したオーナーはこのリグでメキシコまでクルーズしたそうだ。
マストはキャビントップではなく下に伸びてキールにステップしてある。
ハインド・クォーターから見えるコンパニオンウェイにはドロップ・ボード(差し板)が一枚。
現オーナーは購入してから2年後の今年に入って再改造に着手した。明日はインテリアを見てみよう。
(写真はいずれもPSC製434艇中、番数不明、1980年製フリッカです。)
⇒ フリッカ・ホームページ、一般的なリグの紹介