このバルクヘッド・マウントのコンパスは、リッチー(Ritchie)社製HV-Cというタイプで、セレニティーに新艇時(1984年)以来ずっと付けられていた。
毎年球体中のオイルが減少する。4年前には上部わずか1.5cmほどしかなかった球体中のエアーが、今年に入って40%以上になってしまった。
本体を外してオイルを補充すれば良いのだが、球体左上のグラスに無数の細かいヒビが入っているため、使えるまで使って新品と交換した方が良いと考え、メンテはして来なかった。
しかし、いよいよ交換の時が来たようだ。
キャビン側(ヘッド内)のカバーを外したところ。
見ての通り、コンパス本体は球体裏側に付いたシリンダーが水平ではなく、下に傾斜する形でベースに座っている。この点は90年代製造のフリッカに多く見られる同じ Ritchie 社製の [Navigator BN-202] でも同じ。
(尚、以前にも書いたが、裏カバーの取り付け位置はあまりにもずさんで、画面左側に大きくずれ、4本のネジの中、右上の1本は孔の円周上に引っ掛かり、何の役にも立っていなかった。)
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交換のためにまず現物を外す。本体(球体やシリンダー)を外すのは簡単で、一番上の写真に見える円形部分のネジ4本と下部の1本を外せばすぐ取れる。問題はその外側、角ばったベース部分だ。
ネジ4本を抜いてから、ナイフ、ノミ、ハンマーなどを使って力づくで外そうとしても外れるものではない。ベースとバルクヘッドの間には 3M5200 などのシーラント兼接着剤が塗ってあるからだ。
しかしシーラント兼接着剤は熱に弱い。故に使用するイグザクト・ナイフ(細いカッター・ナイフ)の先を電熱器で暖める。
(工作用ヒーティング・ツールがあればツールの先端をナイフの刃に替えるだけなので便利だ。)
熱くなったナイフの先端をベースとバルクヘッドの間に突き刺すようにしてシーラントをカットしていく。
全部カットするのにナイフを計5~6回暖め直したがカット作業は極めて容易だ。
その後フラットヘッドのドライバーを差し込むと、ベース全体がポロッと外れる。外れたベースを見てシーラントの量の少なさに驚き、その接着力に改めて感心した。
バルクヘッドのジェル・コートに残ったシーラントを除去。
ベースを剥がした後に見えるベージュ色が、ジェル・コートのもともとの色だ。25年ですっかり白くなってしまった。
この後、孔にポリ袋と古いコンパス・カバーをビニール・テープで貼りつけ、新しいコンパス装着用の部品が届くのを待つ。
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コンパスのHVシリーズはすでに廃盤となっているので、交換用としては同じ Ritchie の[Venture SR-2] を選択した。
SR-2 を選んだのは、ダイヤル色がブルー、コンパス・オイルの補給不要、バルクヘッドの上り角度を気にすることなく装着可(仮に垂直でなくても取付け角度調整は不要)、などの点が気に入ったからだ。
しかし、必要とする装着用孔の直径が旧HVシリーズのものより小さいなどの理由から、HVシリーズのコンパスの孔にSR-2 を装着するにはアジャスター・プレイトが必要。アジャスター・プレイトは小売店ではなく、直接 Ritchie から実費で取り寄せることができる。今それが届くのを待っているところ。
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尚、SR-2 には艇のヒール角度を示す大雑把な目盛のインクリノメーターがセパレートで付いて来るが、それはコンパス下ではなく、コックピット後部、スターンのエンジン・ダッシボード下に装着する予定だ。
(写真はいずれもPSC製434艇中295番 Serenity です。)
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