2008年11月30日日曜日

1981年製

中古艇の販売サイト 『ヨットワールド』 のページで Flicka と入力し検索するといつもフリッカが12、3艇は出てくる。その中でこの1981年製があった。

ギャーフ・リグでシュラウドは各舷2本づつ。PSCはギャーフ・リグの注文も受けていたし、この写真では別段特別変わったところはない。













しかしバウスプリットの装着法がユニーク。デッキへもスルー・ボルトで留めてあるのだろうが、ステム両側とバウスプリットをチェインプレイトで留め込んであるのが目を引く。


ボブステイにはワイヤー・ロープではなくチェインを使用。バウスプリットにはプルピットがなく、ブルワークスに沿ってスタンチョンとライフラインも付いていない。

これらの点からこの艇はオーナーが自分の好みに合わせて造った自作艇、またはベア・ハルとベア・デッキだけPSCから購入した、いわゆる 『キット・ボート』(正式には 『オーナー・コンプリーション・ボート』)だろうと想像できる。

ハルを良く観るとフリッカのシンボルである葡萄の蔦のスクロールワークがない。不可解だ。PSC製のハルならスクロールワークが付いているはずだ。サイトの情報によるとハルはファイバーグラス製だが、ひょっとしてコールド・モールドの自作ハルか。いやいや、ハルにはカーヴル・ブランキングの擬似ラインもついている。自作ではここまでできないだろう。

キャビン・トップ前方に造り込んだフォアワード・ハッチの孔も自作にしてはうまく出来すぎている。やはりキット・ボートだろう。ハンド・レール装着法や、低いブルワークス上の木製レールの形状は素人っぽい。


PSCによるベア・ハルとデッキだけのキット・ボート販売は1983年頃までにはなくなったようだから、この艇は最後のPSC製キット・ボートのひとつかも知れない。

(写真はいずれもPSC製434艇中、番数艇名未確認1981年製フリッカです。)
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2008年11月29日土曜日

セイラーの知恵 『シート・トゥー・ティラー』

シート・トゥー・ティラー(Sheet-to-Tiller)システムは、メインシートまたはジブシートに現れた風向の変化をメインシートまたはジブシートから引いた専用ラインでティラーに伝え、風向に対する艇の進行角度を保つ、自動操舵装置のこと。

『オートパイロット』 などのエレクトロニクスにも、『モニター』 など高価なウィンドヴェインにも頼らない、昔からセイラーたちが使ってきたセルフ・スティアリングだ。ただし、真下りでは効果的ではなく、使えない。


風に関係なく針路を設定するオートパイロットとちがい、ウィンドヴェインのように例えば風向きが10度変わればそれに応じてコースも10度変え、風向に対する艇の進行角度が一定に保てる。

写真のフリッカにはオートパイロットも付いているが、ご覧のようにこの写真では稼動していない。ティラーの片側にゴムの伸縮ライン、反対側にはシートから引っ張ったラインを結んでティラーをコントロールしている。

詳しくは Sheet to Tiller で検索するか、こちらを参照 ⇒ [Sheet-to-Tiller Self-Steering]

(写真はPSC製434艇中200番台後半の Kittiwake です。)
Kittiwake オーナーのサイト

2008年11月28日金曜日

ギャリー

フリッカは20フィート艇でもクルージング艇だからギャリー(台所)もヘッド(トイレ)もある。ギャリーにはアイス・ボックス、シンク、レンジが一式揃っている。キャビンの天井の高さが充分あり、まっすぐ立って仕事ができるので楽だ。

Vバースから見たフリッカのポートサイドのギャリー。手前からアイスボックス、シンク、レンジの順。レンジのフタはまな板になる。

アイスボックスの前に下がっている白いものは折りたたみ式テーブル。その向こうにシンク下のドアと引き出し。







シンクの下のドアを開けたところ。艇の喫水線は奥の棚の板の上辺あたり。










レンジの上のフタ(まな板)をとると二口の非圧式アルコール・コンロ。その向こう、クォーター・バースの上に見える三枚の白い板は、この艇特製の折りたたみ式サイド・テーブル。詳しくは⇒ [こちら]



清水タンクはこのようにクォーター・バースの下にある。







(写真はPSC製434艇中、上から順に番数艇名未確認(1981年製)、番数艇名未確認の別艇、220番目 Gypsy Lady = Shorty = Becky Ann、一番下もまたまた別の番数艇名未確認艇です。)
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Gypsy Lady

2008年11月27日木曜日

ナヴィゲーション・ライト=航海灯

1970年代のPSC製フリッカのモールドは航海灯用にバウの上端の両舷がへこませてあり、そこにそれぞれ緑灯、赤灯が仕込んである。
















1981年製ではこのへこみがなくなっている。








最後の1998年製までこのへこみのなくなったハルのモールドは変わっていない。航海灯は右舷・左舷に色分けされた一灯式のものをこのようにステム上端につけたものが多いが、90年代のものはおおかたバウ・プルピットのレール正面に装着してあるようだ。







(写真はPSC製434艇中、上から順に056番目 Redfeather、182番目 Whisper、295番目 Serenity です。)
Flicka20_Japan
Whisper

2008年11月26日水曜日

ポート・ホール (Video)

キャビンから外を見ながら。9月13日撮影。



(ビデオはPSC製434艇中295番 Serenity です。)
Flicka20_Japan

2008年11月25日火曜日

バウスプリットのキャップ

バウスプリットは何年も経つと、特に雨の多い地方では腐りはじめる。スプリット先端部は木のエンド・グレイン(柾目)になるのでそこから水が滲み込んで腐蝕の原因になりやすい。ペイントするのも良いが、キャップで保護するのも悪くない。















ちなみに乾燥した南カリフォルニアの21歳のフリッカ Serenity (PSC製295番)を買った時、バウスプリットは痛んでいなかった。北カリフォルニアに移して3年後もまだ大丈夫。シーラントやペイントを塗布してメンテはしている。

(写真はPSC製434艇中、番数未確認 Mira です。)
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2008年11月24日月曜日

プロパン・ボンベの置き場所

フリッカでは非圧式アルコール・コンロ(2口)がスタンダードだが、プロパン・コンロに換装する艇もある。プロパンはエアーより重いから漏れたガスがキャビン・ソール(床)やビルジに溜まると危ない。爆発の恐れがある。配管にも国によりちがうが厳重な規制が敷かれている。

タンク(ボンベ)の置き場所としては、漏れたガスが間違いなく艇外に排出されるように、細身タイプのアルミ製タンクをスターン・レールの外側に掛けるオーナーも多い。

その一例。













これも同型のタンク。プロパンは世界各地で比較的手軽に購入できるらしい。






ガスはガスでも天然ガスの場合エアーより軽く、漏れても艇外に出やすいのでプロパンより安全だが、購入先が限られるのが難点。このためクルーザーたちには敬遠されているようだ。

2枚目の写真と同じ艇。プロパン・タンクはカバーもなく、直射日光にさらされ、雨に打たれ、海水スプレイを浴びているのが普通。しかし、この艇ではキャンバス・カバーを被せた。







タンクを艇内に置く場合、漏れたガスが艇内に溜まらないように密閉式専用ロッカーが必要(艇内に対しては密閉、艇外に対してはリークしたガスを直接排出できるようロッカー底部に孔がある)。次のリンクのフリッカは1983年末の新型デッキ・モールド艇だがリークしたガスの専用排出口をトランサムに設けるなどして、コックピット・シート間にプロパン・ロッカーを設置した。⇒ [6ページを参照]

(写真上はノー’スター製20艇中、最後の20番目 Motu、下2枚はPSC製434艇中171番目 Kawabunga! です。)
Motu
Kawabunga!
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2008年11月23日日曜日

ハモック

ハモック(ハンモック)は誰が考えたか、船艇には便利なもので、昔の日本の軍艦では兵員はハモックに寝ていた。軽く、場所も取らずに必要な時だけ取り出せる。吊るしてあるからギンボル(ジンバル)だ。

長期クルージングに出る際、缶詰、乾物、穀物、インスタント食品だけが食料では味がない。





果物や野菜・根菜の置き場所としてハモックは理想的な保存場所だ。

(写真はPSC製434艇中、番数艇名未確認、比較的初期のキット・ボートと思われるフリッカです。)
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2008年11月22日土曜日

キャビン暖房 (追加)

[キャビン暖房のページ] の一番下の写真、コンロに特製のステンレス製タワーを立てているが、その代わりに、素焼きの 『植木鉢』 を逆さに乗せる方法も良く知られているようだ。

部屋全体がサウナのように(おおげさか)暖まるが、植木鉢は途方もなく熱くなるので取り扱いに大変注意を要する。火を止めた後でも台所の熱い鍋を掴むミットなどではとても断熱できず火傷するという。消してから長い時間が経たないと冷えないようだからくれぐれも注意。

  * * *

こちらは木片などを燃やす薪ストーブを載せた艇。
















(写真はPSC製434艇中、番数未確認 Mira です。)
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2008年11月21日金曜日

ミシガン州の自作フリッカ - そのコックピット

この自作艇のシリーズは今日でお終い。

シートは傾斜がつけられ座りやすそう。何より興しろいのがソール(床)だ。側壁を見れば分かるが前方も後方も中間点に向けて傾斜している。排水口が後方から三分の一位のところにあるのだろう。エンジン・コントロールはラインが掛からないようにへこんだ場所に装着してある。スターンのカバーは単なるアクセス用だろうか。





この艇には実物を見るか製作者に訊いてみないと解けない謎がいくつかある。







コーミングはなぜこんなに低いのだろう。まさかシートに傾斜をつけた分だけ背もたれが長くなるのでコーミングがなくても十分と考えたわけでもないだろう。それともコックピット周りのデッキが高いのか。いや、ハルのシアーがコックピット部分で [ブレイクして下がっている] 点を考えるとそれはないように思える。ともかくこれではスプレイどころかバシャンともろにスプラッシが入ってくるのでは、と心配してしまう。

***

=> 後日註: 約1年半後、やっと [シアー全体を見られる写真] が出た。コックピットにはサイドデッキよりも高いコーミングが付いている。

***

(写真はいずれもミシガンで建造中の自作フリッカです。)
www.yachtworld.com キーワード欄にFlickaと入れてサーチ・ボタンをクリック。(この自作艇は2006年PSC製とあるがPSC製にあらず。)

2008年11月20日木曜日

スターンとルーワードの波 (Video)

前回と同じ日、10月4日撮影。



(ビデオはPSC製434艇中295番 Serenity です。)
Flicka20_Japan

2008年11月19日水曜日

ミシガン州の自作フリッカ - そのキャビン

開放的なオリジナル・デザインと比べて、この艇では自分の使い勝手を考えて徹底的にカスタマイズしている。自作艇ならでは、だ。色は白基調でモダンなプロダクション艇の感がある。

コンパニオンウェイから見たキャビン。スターボード側、手前からNAVステーション、ヘッド、ハンギング・ロッカー、奥にVバース。ポート側はギャリーが占有。

バルクヘッドがキャビン・トップのマスト・ベースをしっかりサポートしている。






NAVステーション。テーブルは造り付けで、食事用テーブルを兼ねる。










その先はヘッド(トイレ)。真ん中のポート(窓)があるところに位置している。










ヘッドとNAVステーションの間の仕切り。これには仕掛けがある。










間仕切りを2段に折り曲げるとテーブルになり、ヘッドとNAVステーションに腰を下ろし、向かい合って食事ができるのだ。






これはコンパニオンウェイとNAVステーション間にあるハンギング・ロッカー。










メイン・キャビンのポート側はギャリーのみ。コンロは大小二口のギンボル(ジンバル)式。ロースターも付いている。熱源はガスのようだ。尚、この艇にクォーター・バースはない。




(写真はいずれもミシガンで建造中の自作フリッカです。)
www.yachtworld.com キーワード欄にFlickaと入れてサーチ・ボタンをクリック。(この自作艇は2006年PSC製とあるがPSC製にあらず。)

2008年11月18日火曜日

ミシガン州の自作フリッカ - そのハルとデッキ

昨日見たフリッカと同じミシガンの自作艇だが、ハルとデッキの結合部にはブルワークスがなく、代わりにトウ・レールが装着されている。

しかし何よりハウスの前面がなだらかに前へ延びて、フォアワード・ハッチがそこに仕込まれているのが目につく。




これはVバースの頭上スペースを確保するためだろう。通常のフリッカではコンパニオンウェイを降りてキャビンに入ればスターボード側にセッティー、その先にVバースと続き、開放観があるが、この艇ではNAVステーション、個室ヘッド、ハンギング・ロッカー、とそれぞれバルクヘッドで仕切られ、その先にVバースがある。頭上にスペースを確保してVバースの居住性を得るためにこの改造が必要だったのだろう。

ハルはストリップ・プランキングで、表裏両面にファイバーグラスを張ったもののようだ。目を引くのがハルの先端、ステムだ。PSC製フリッカに比べてステムが鋭利に尖っているように見える。



また意図的にカーブル・プランキング・ラインを施し板張りを擬したPSC製ハルと違ってのっぺらぼうだ。

こういうハル細部の変更やハウス前面の傾斜により、フリッカの 『木造艇』 を思わせるイメージがいくらか薄らいだかも知れない。が、バウスプリット下に付けたニー (knee) はいかにも木造艇だ。

船腹のラブ・ストレイクにはステンレス製レールが付けてある。ハル全体を真横から見た写真がなく、艇のシアー・ラインとハウスやコーミングなどスーパーストラクチャーのラインを確認できないのが残念だが、どうも1960年代に流行したレイズド・デッキのセイルボートたちのように、コックピット部分がグッと落ち込むブレイク・シアーになっているように見える。

スターンは一見変わりないが、ハルの後端上部がさらに一段低くなっているのが分かる。ぜひとも一度全体のシアーを確認してみたいものだ。







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=> 後日註: 約1年半後、やっと [シアー全体を見られる写真] が出た。当ページ上から3枚目の写真はポート・サイド(左舷側)の写真かと思っていたが、さにあらず。スターボード・サイド(右舷側)の写真だった。つまりシアーラインの高い方がコックピットだった。

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(写真はいずれもミシガンで建造中の自作フリッカです。)
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2008年11月17日月曜日

ミシガン州の自作フリッカ - そのバウ・プルピット

PSCが1998年にフリッカの建造をやめた後も新しいフリッカが生まれている。図面から自作している人たちのフリッカだ。中には完成したハルを売りに出している人や、艇全体を殆ど完成させながら売りに出さざるを得ない人もいる。

この艇はオーナー・ビルダーの健康上の理由で売りに出された。自作艇らしく、いろいろなアイデアが盛り込まれている。

バウ・プルピット。視覚的デザインのおもしろさもあるが、その機能性にも惹かれる。






左舷右舷にひとつづつ付けたバウ・ローラー。アンカーをバウスプリット、ボブステイ、ウィスカー・ステイに当てることなく揚げ下げできるように配置されている。

バウスプリット下の添え木(ニー knee)のパターンはプラットフォームの波型テーマに合わせてある。両舷のプラットフォーム・サポート用ステンレス製ロッドはアンカーが船体やスプリットに当たるのを防ぐ役目も担っているのかも知れない。


20フィート艇のバウに常置アンカー2本。しかしこの配置だとプラットフォーム上のスペースも確保され、ジブのテイク・ダウン時なども足場に困らない。







  * * *
プルピット: アンカー・ロード(anchor rode)を船艇に引き入れるところだからプルピット。英語の pull と pit を合わせて一語にしたもので、その時 l をひとつ落としてある (pulpit)。

日米を問わず、バウにあるものだけプルピット、スターン(コックピット後部)にあるものはプルピットに対応するものということでプッシュピットという人もいるが、それは正式名称ではない。スターンの場合はスターン・プルピットと呼ぶのが正しい。

(写真はいずれもミシガンで建造中の自作フリッカです。)
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2008年11月15日土曜日

シングルハンダーズ・パッケージ

PSC製フリッカには 『シングルハンダーズ・パッケージ』 なるものがある。ジブ・ハルヤード、ステイスル・ハルヤード、メイン・ハルヤード、+2本のリーフィング・ラインをすべてコックピットまで引いて、シングルハンドしやすいようにする、という仕掛けのことだ。

これがないからと言ってシングルハンドできないことは決してないが、あると便利。

マスト・ステップのオーガナイザー。この艇 『セレ二ティ』 ではスターボード側にブロック3個、ポート側に2個。


スターボード側は手前がメイン・ハルヤード、真ん中白いラインがステイスル・ハルヤード、奥がファースト・リーフのクリングル・ライン。

クリングル・ラインはブーム後端からブーム内を通り、こうしてブーム先端から出てくる。




(尚、カニングハム・ラインはない。リーフ用のアイはブーム先端クリングル・ラインの上に見えるフックにかける。このフックを使わない場合、ブーム先端から出たクリングル・ラインを予めリーフ用アイに通しておき、それからマスト・ステップ・オーガナイザーのブロックへ。これで理論的にはクリングルとカニングハムをコックピットから1本のラインでコントロールできる。これを 『シングル・ライン・リーフィング』 と呼ぶ。しかし実際的にはそうするとラインの運びがスムーズに行かない。アイはフックにかけるのが手早い。)

ブームのアフト・エンドの様子。グリーン・ラインがファースト・リーフのクリングル・ライン、レッド・ラインはセカンド・リーフのクリングル・ライン。



(いろいろ試した結果、リーフ時は水平方向の引っ張りだけをクリングル・ラインに任せ、垂直方向の引っ張りはクリングル/クルー・アイを通してブームに結ぶ約130cmの独立ラインを使用している。)

ポート側のブロック2個。手前はジブ・ハルヤード、奥はセカンド・リーフ・クリングル・ライン。デッキ・オーガナイザーで90度ターンしてコックピット方向へ向かう。



コックピットから見たポート側キャビントップ。内側がセカンド・リーフ・クリングル・ライン、外側がジブ・ハルヤード。ロープ・クラッチが付いているので内側のクリートをハルヤード用として使い、クリングル・ラインはクリートなし、外側のクリートは今アイドルになっている外側のアイを通してきたジブ・リーフ時のジブ・ダウンホル・ライン用として使える。


尚、スターボード側もキャビントップ・ウィンチはひとつだが、ロープ・クラッチが付いていないのでクリートは3本ある。

(写真はいずれもPSC製434艇中295番目 Serenity です。)
Flicka20_Japan

2008年11月14日金曜日

ワーム・ギア

フリッカのラダーはトランサムに付けたアウトボード・ラダー、そしてヘルムはティラーだ。PSC製434艇中、ホイール(舵輪)付きの艇はただのイッパイもない。400セット以上売れたブルース・ビンガムの図面や、雑誌 『ラダー』 掲載の図面から自作した艇でもホイール付きフリッカの記録は皆無だ。

ただノー’スター製20艇中イッパイだけホイール・スティアリングのフリッカがある。フリッカ史上この艇だけがホイール・スティアリングだ。その艇の名は 『スイート・ピー』 。

ホイール・スティアリングと言っても、ヘルムズマンが舵輪の後ろで操作する今日のチェイン駆動やワイヤー駆動式のホイール・スティアリングではなく、ワーム・ギアと呼ばれる物。

ワーム・ギアはティラーやチェイン/ワイヤー駆動式のホイール・スティアリングに比べて一般にコックピットが広く使える利点がある。





しかしワーム・ギア一番の利点は舵軸についたギア(歯車)とホイールのギアが直接噛み合うので頑丈で故障も少なく耐久性があることだろう。日本の名艇、横須賀産の 『マリナー・ケッチ』 や 『フジ・ケッチ』 にも付いていた。

ただ舵取りのエンドからエンドまで(ハードからハードまで)が長い、というのが欠点と言えば欠点。つまり方向転換に舵輪を余計に回さなければならない。今では新艇に付けられることは全くなくなってしまった。

(写真はノー’スター製20艇中15番目 Sweet Pea です。)
⇒ フリッカ・フレンズ掲載の同艇:2、7、10、14-15ページ参照
⇒ フリッカ・データベースの同艇:Sweet Pea

シー・アンカー

外洋での嵐対策いわゆるストーム・タクティックとして最も良く実行される方法にヒーブ・ツーとライング・アハルがある。後者ではベア・ポール、つまりセイルは全部降ろしてハルだけで嵐の通過を待つ。いずれの方法でも艇を安定させるためシー・アンカーをウェザー(風上)の海に流す場合が多い。

これは 『パール(フライト・オブ・イヤーズから改名)』 のシー・アンカーのセット。







いつでも使用できるようにパラシュート・アンカー、ライン、そして回収用フロート(浮き)が一式、きちんと畳まれバッグに入っている。バウ・クリートとコックピット・ウィンチから取ったライン(ブライドル)から展開し、バウが波に対してヘッド・オンではなく斜めに向くようにする。

(注:フリッカのようなフル・キール艇ではこのように展開するが、フィン・キール艇では艇のスターンから展開するのが良いという。)

これはバウ・クリートからのラインをリードする専用チョックの拡大写真。上の写真で分かるように左上のレールに近いところに設置されている。




  * * *
シー・アンカーにはパラシュート式、コーン式などがあるが、前者でフリッカ・オーナーたちに信頼されているのが 『フィオレンティーノ』 ブランドの [パラ・アンカー]。上の写真のシー・アンカーもこれだ。

ただアメリカのコースト・ガードのテスト結果によると小さなドローグをラインにシリーズでつないだ連続ドローグ式のものをスターンから展開するのが最も効果的という。
[コースト・ガードのテスト]

特に大きい波がくずれるいわゆるブレイキング・ウェイブの時にはこのタイプでないと、いかなシー・アンカーでも波による艇の転覆を防げないという。

このビデオの艇はいずれのタイプのシー・アンカーも打っていないようだ。大きなブレイキング・ウェイブの力は圧倒的だ。
[ブレイキング・ウェイブによる転覆]

連続ドローグ式ではジョーダン・シリーズ・ドローグが知られている。ベアー・ポール艇のスターンから流す。直径5インチのドローグを100-200ヶ、ラインにノットで固定してある。
[ジョーダン・シリーズ・ドローグ]

(写真はいずれもPSC製434艇中、最後の434番目 Pearl、旧名Flight of Years、です。)
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2008年11月12日水曜日

ソーラー・パネル

エレクトロニクス機器を多く搭載している艇ではバッテリー充電を陸電やエンジンに頼らない方法として風力発電機やソーラー・パネルを付けている。

設置方法に頭を悩まさなくて済むロール・アップ式。










メイン・シートがスターン・プルピットの下段に装着してあるので、上のパイプをそのまま利用できた例。







この艇はシートが上のパイプにあるので後ろにステンレス製マウント・フレームを付けた。






プルピット両翼に各一枚を宛てた艇。それぞれ出力45wのモノクリスタリン・タイプ。電線はマリーン・グレイドの12番。両パネルからの電流は1個のレギュレーターを経て各バッテリーにつながれている。



規格ではフルに太陽に向いている時パネル一枚3.5アンペアの出力だが、実際はx2で7アンペアというわけには行かず、2枚合わせて約5アンペア。この好条件は一日平均4-6時間しかないが毎日艇に着いた時電圧を調べてみると両バッテリーともいつも14V以上あるそうだ。

設置方法の記録⇒ [6-7ページ、Punker Doodle]

これは以前出てきた 『モウジョウ』 のタワー・マウント。今まで35ノットの風の中、ビーム・リーチでもランでもがたつき音一つなかったそうだ。風力(400w)とソーラー(70w)合わせて、レイダー、オートヘルム、GPSプロッター2台、航海灯などの灯りをつけてミシガン湖を100マイル走った時、バッテリーはいつもフルに充電されていたという。




尚、この艇はスターンの船外機+タワー機器一式の重さに対抗するため、Vバース下の清水タンクは満杯に、フォアワード・ビルジには200ポンドの鉛をファイバーグラスで囲んで設置するなど、トリム(バランス)に腐心しているそうだ。

(写真はPSC製434艇中、上3枚はいずれも番数艇名未確認、4枚目番数未確認 Punker Doodle、最後は209番目 Mojo です。)
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キャビン暖房

フリッカにはギャリーに非圧力式アルコール・コンロが付いている。ひとつでも燃やすと短時間で結構暖かくなる。特別なヒーターは必要ないかも知れない。

(周知の様に、キャビンを閉め切ると一酸化炭素中毒の危険あり。いずれかのポートかハッチを少し開けて新鮮な空気を取り入れるべし。)

寒い地域ではこの 『フォース10』 灯油ストーブを付けている艇も多い。








キャビン・トップに小さい煙突用の孔を開ける必要が有る。つまり艇外に排気するので一酸化炭素中毒の危険性は格段に減る。だが室内の酸素を使って燃やすことに変わりなく、キャビンを閉め切るとやはり危ない。(尚、臭いが気にならなければ燃料は軽油でも可。)

取付法、写真、図は⇒ [フォース10]

***

極端な寒冷地でも威力を発揮する 『エスパー・エアトロニック・D2』 を付けているフリッカも少なくない。ディーゼル・エンジンで走る長距離トラックにも広く装着されている⇒[エスパーD2カタログ]。これは軽油を燃やす暖房機で、稼動させる為に艇のエンジンがかかっている必要はない。というよりエンジンをかけなくても暖を取れるように開発されたもの。(周知の様にディーゼル・エンジンはガソリン・エンジンとちがい、ギアを入れ重い荷物を積み坂を登っている、プロペラを回して艇を推進させている、というように大きい負荷がかかっている時がエンジンに最適の状態。逆に負荷のない時、つまりアイドリング時はエンジンの消耗が最も激しく、排気も一番汚い。アイドリングは必要以上しないことが肝要。)

D2はエンジン・ルームに設置できるのでキャビン内に専用スペースは無用。熱交換で温めたきれいな空気だけを送り込む。キャビンの空気を汚さず安全だ。左の写真、黒色の一番太いホースが送気菅。キャビン内の一番低い(=空気が冷たい)場所、キャビン・ソール(床)のすぐ上に送るようにしてある。

欠点は運転中の音が結構うるさいことだろうか。

***

他にフリッカ・オーナーたちのアイデア2つ。

個室ヘッド(トイレ)の後ろのロッカーの天井(つまりコックピット・シートの下側)にDC12Vから AC110-120Vへの700Wインヴァーターを付けた例。すぐ後ろのラザレット内に置かれた艇のバッテリーと直結している。ヒューズはつけてある。


インヴァーターの前面にスイッチに並んでコンセント(2ヶ)が付いている。キャビン内に置いたスペース・ヒーターのプラグを差し込んで暖を取る。エンジンをかけバッテリーを充電しなくても結構長い間使えるそうだ。

これはギャリーのアルコール・コンロの上に置く、自作のステンレス製熱拡散器。コンロからの熱い空気がパイプの中を通る空気を暖めて効率よく室内を暖めるらしい。タワー全体が火傷するほど熱くなるという。


ここまでやらなくても単にコンロで湯を沸かし、茶なりコーヒーなり飲むというのはどうだろう。

(写真はPSC製434艇中、上から番数未確認 Shanti、412番 Dulcinea、340番 Toucan、番数未確認 Sans Souci です。)
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Toucan