2015年3月28日土曜日

ザンジバー エンジン

今回のザンジバー・シリーズ最後はエンジン関係の話し。

船内機は1GM10。

実はこの写真1枚が筆者の長年の疑問を解いてくれた。





これまで1GM/1GM10 の写真も多数載せて来たが、冷却水経路がこれ程はっきり分かる様に写っている写真はこれが初めてだ。画面中央エンジン正面にある黒いゴムの冷却水排水管。下から上に伸びてサーモスタットに接続、サーモスタットの出口(上)側に繋がれたゴム管が画面左(即ち右舷側)の合板に沿ってアフトへ走り、途中で合板にある孔を抜けてコックピット・シート下に出て行き、もう1本のゴム管が戻って入って来てエンジンのミキシング・エルボーに繋がれている。

つまり、セレニティーのエンジン・ルームの壁に [使われずにぶら下がっている] 2本のゴム管はまさにこの冷却水用配管なのだ。決してエンジン・ルームの通気用ではない。セレニティーでは2006年2月購入時、ファクトリー搭載の1GM がフリーズしていたので新品の1GM10 に換装した。その時インストーラーがこれら2本のゴム管を使わず、新エンジンに付いて来たサーモスタットからエルボーへの直結管をそのまま使用するようにしていたという訳だ(この2本の管についてのお話は [こちら] 。)

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2本の管がエンジン・ルームに出入りしているのはコックピット・シートの下、常時喫水線より高い位置にヴェント用ループが仕込んであるからだ(上のリンク、5枚目の写真参照)。エンジンを停めた時、ハルの取水口からエンジン内を経てエルボーに至り、さらに排気排水用ウォーターロックへと流れる冷却水がサイフォン効果でエンジン停止後も流れ続けるのを防止するのが目的に違いない。これが無いと流れ続けた水がエルボーまで上がってエルボーからエンジンのシリンダー内に入り、エンジンがお釈迦になるという危惧から装着された仕掛けだ。サイフォン効果での水流があればエンジンだけでなくエンジンから出た水が艇内に溜まり長く放っておくと沈船の危険さえ無いこともない、ということだろう。

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セレニティーでは新エンジンに換装してから9年以上(その間エンジンは殆ど毎週運転)このヴェント・ループ無しの直結アレンジで運転して来たが、エンジン停止時のサイフォン効果が有るにしろ無いにしろエルボーからシリンダーへ水が流れた形跡は無い([このリンク先] 3~4枚目の写真参照)。エンジンは着岸していつも5分間アイドリングでクール・ダウンさせた後停める。直後に必ずスルー・ハル取水コックを閉める。しかしセイリング中は機帆走からエンジンを停めて純帆走に入っても取水コックを閉めたことは無い。いつも最低1時間、通常2~3時間、最高4~5時間は帰港前に再度エンジンをかけるまで開けっ放しだ。

エンジン停止時の水流は冷却水ポンプのインペラのおかげでポンプ内で断ち切られているのではないかと思う。

尚、直結式の配管は上のリンク先一等上と一等下の写真を参照。他のフリッカでも直結式の艇は無いかと探したところ [フロリダの赤いフリッカ] の例が見つかった。セレニティーでは今でも2本の管は壁にぶら下がったままなので、今年のシーズン後にでもそれらをエンジンに繋ぎ直して運転してみようかと考えている。ヴェント・ループはオーバー・キル(やり過ぎ)かも知れないがそれがあれば心配事がまた一つ減る。

さてこのエルボーの前にヴェント・ループを入れる処置はフリッカ(またはPSC)特有のものではなく、ABYC (American Boat and Yacht Council) やロイドでも規定されているのではと思うがどうだろうか。フリッカやフリッカ以外の艇をお持ちの方はぜひ自艇をチェックされ boatlife2go @ yahoo.co.jp (@の前と後ろのスペースは削除され度)までご一報下さればありがたい。うろ覚えだが関東のフリッカの一オーナーの方には既に数年前この事をお知らせ戴いた様な気がする。

(写真はPSC製434艇中387番目 Zanzibar です。)
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