ファクトリー・オリジナルのドロップ・ボード(差し板)は厚いソリッドなティークでずしりと重い。(ブリッジ・デッキが付けられた1983年当時3枚式だったものが後に4枚式に変わったのは1枚1枚を軽くするためと思われる。)重厚なのは侵入や浸入を防ぐ大切な板なので納得できる。
だがSF湾でデイ・セイリングやショート・クルーズをするだけの日常で頻繁に出入りするには重過ぎるし、ニス仕上げなので取り扱いにも気を使う。
そこで合板を使い軽量で取り扱いやすいものを作ることにした。以前のオーナーが作った [1枚式の物] もまだあるが、それは外した時、合板とは言え厚めの1枚式なので重く、その大きさから収納スペースもVバースということになりハンドリング面で難があった。
大体形が出来たところ。上下2枚を蝶番でつなぐ。
白っぽく見えている枠は全部ポプラ材。ところどころ染みになっているのは振動式電動ツールで外溝をカットした際に付いた焦げ目。その他接合部に充てたフィラーの色も見える。いずれも上からステインを塗るので問題ない。上下2枚の合わせ部分は通常雨の浸入を防ぐため斜めに切り、コックピット側に水が落ちるようにしてあるが、この差し板ではその細工は省略。代わりに合わせ部を2枚折りした銅板でカバーする。
差し板を外す時は、上の1枚をひょいと持ち上げると全体が外れる。外れたらすぐに折畳む。
画面左側のブリッジ・デッキに乗る部分には下駄を履かせてある。中央部寄りに付けた茶色の小さい木の棒2本が見えるだろうか。材料は腐食し難いレッドウッド。この下駄の歯のおかげで合板部がブリッジ・デッキ上に溜まる水に直接浸かることはない。また、蝶番でつながった差し板全体がすんなり所定位置に収まりやすくなるという効果もある(差し板を嵌める際、左右への傾き角度を微調整できる)。
クォーター・バースでも個室ヘッドでも簡単に置けて、軽量で取り扱い易く、そこそこ丈夫なものということをテーマにした。
蝶番は仮留め。この後実際に艇に行き、ドライ・フィットして収まりを確認した後、持ち帰ってステインとセトールを塗布。その後錠前用の金具、蝶番、さらに2枚の間からの水の浸入防止用として上の板の底部に銅板フラッシングを付ける。
尚、重さはファクトリー・オリジナルの3枚式に比べ約1/3。
(写真はいずれもPSC製434艇中295番 Serenity 関係のものです。)
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