2010年8月16日月曜日

パシフィック・シークラフト 1号艇 (つづき)

ノー'スターのハル・モールドを使って造ったPSCのフリッカ、第1号。引き続き特徴的な部分を見てみよう。

何より目を引くのは小さなコンパニオンウェイ。










入り口前にブリッジ・デッキはないが、底辺がコックピット・シートよりも高く、荒天時コックピットに入った潮がキャビンに流れ込み難くなっている。この小さな入り口はノー'スター製にもその後のPSC製にも見られない特徴だ。

一方、ラダーの造り、ストレートな木製コックピット・コーミング、またフォアのハッチがキャビン・トップではなくフォア・デッキにある点はノー'スター製と共通している。

昨日の写真では白かったトランサムが黒く塗られている。もともとどっちの色だったかは不明。






スターンにブリッジ・デッキがあること自体ユニーク。メイン・シート装着法も他のフリッカに例を見ない。





一番上の写真も合わせて見ると分かるが、シートは右舷と左舷に跨っており、ティラーはその間で操作するようになっている。

エンジン計器類はブリッジ・デッキ前面に配置。

ハッチがノー'スター製同様フォア・デッキにあることが確認できる。その前にあるのはウィンドラス。





写真で見る限り、丁寧に乗られているようで、まだまだ十分現役として活躍できそうだ。

さて、これが以前1号艇として [フリッカ・フレンズで紹介された艇] と果たして同じ艇なのか、という問題だが、やはり別艇だろう。

この艇、ダフニーこそPSCで造られた最初のフリッカであることは疑いようがない。それはハル番号から明白だ。ダフニーの写真はPSC1号艇がノー'スター製からバリバリのPSC製に移行する過渡期のものであることを物語っていると言えるだろう。

そもそもノー'スター製フリッカはノー'スター自体はFRP製ハルを造っただけだ。デッキはウェスタリーが木で造り(つまり、デッキ・モールドは無かった)、内部はウェスタリーやオーナー自身が仕上げる、いわゆるセミ・プロダクション・ボートだった。

この艇ダフニーのデッキやキャビンを誰が造ったのか不明だが、見ての通りまだ木製である。全部PSCが造ったのかも知れないが、この1号艇の段階ではまだノー'スター製のようなセミ・プロダクション・ボートであった可能性も高い。















フリッカ・フレンズで紹介された艇をビンガムがPSCの1号艇と呼んでいるのは、それがバリバリのPSC製、つまり、PSCがフリッカ史上初めてデッキ・モールドも造り、そのモールドを使って造った最初のプロダクション艇だからだろう。(PSCがこの時ハル・モールドも自社で造り直したかは未確認だが、恐らくそうではないだろうか。スターン側の葡萄のスクロールワークはPSCがハル・モールドを造り直した時に小型の物に変更された。)

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こう見て来ると、以前当ブログで、ノー'スター製2号艇として取り上げた [この艇] も、現物でハル番号を確認するまでは憶測に過ぎないが、過渡期のPSC製2号艇である可能性が無いとも言えない。

(写真はいずれもPSC製434艇中001番 Daphne です。)
フリッカ・ホームページにある同艇の紹介