機能的に理にかない見た目にも美しい優れたセイルボートのデザイン(設計)はアートとサイエンスの融合で生まれる。どちらが欠けても成り立たない。バウスプリットも付属的とは言え船体同様大切なデザインの一部だ。
PSCフリッカのバウスプリットには通常アンカーも収納できるプラットフォームとクルー転落防止のためのプルピット・レイルが付いていて、実用プルピットとしての機能を満たしている。
これはプラットフォームとプルピット・レイルを外して裸にした状態。
フリッカ・サイズのセイルボートに付けられたイギリスの伝統的なバウスプリットと比べるとその違いが顕著に見て取れる。長さが短めであることと、海面に対して平行ではなく、シアーラインに沿ってそのまま前方に上昇していること、の2点だ。
キャラウェイのオーナー、アンガスはイギリス人。
小さい頃から見慣れたスプリットの方がしっくりするのだろう。このようにイギリス伝統のスプリットに換装した。
PSC製より少なくとも30cmは長い。その分ジブのセイル面積を大きく出来る。これだけ長いと確かに海面に平行になるようにした方が、機能的にも美観的にも座りが良いようだ。
ジェノアとステイスルを装着。
イギリスの往年の漁船コーニッシ・クラバーをモデルにした [同名のヨット] 、その一流のオーストラリアのヨット [クータ・ボート] などに見られる伝統的なスプリットの形状を見事に復元している。
アンカーはスプリットの下に固定。
錨泊時は両舷のバウ・レイル上にあるチョック(フェアリード)を通して出した [ブライドル式アンカー・スナッバー] を使っているようだ。ブライドルやスナッバーはアンカー・チェインに掛け、チェインと艇の間のショック・アブゾーバーの役目をする。ノイズが減るのは無論、走錨防止にもなる。
イギリス流バウスプリットに対しPSCのデザインは短かめのスプリットをあえて海面と平行にせず、シアーラインの延長のようにそのまま前方へ伸ばしている。プラットフォームやプルピット・レイルと一体になるスプリットとして理にかなっているようだ。
無論フォアステイの基盤を艇の前方に出してセイル面積を増やすというのがバウスプリット本来の機能だが、アンカー・プルピットも提供した上、装着したプルピット・レイルのアウトラインを利用して、見た目も美しく仕上げている。
バウスプリットはフリッカにはなくてはならないものだが、それぞれ機能的にも美観的にも成功例と言えるだろう。
(写真はいずれもPSC製434艇中423番目 Caraway です。)
⇒ キャラウェイ・ホームページのバウスプリット・プロジェクト