ラミネート・ガラスが届いたのでカットを始める。
まずテンプレート(パターン)で面取り。なるべくカット数が少なくて済むように考えて、このような配置になった。
最初にカットしたのは中央部、大小の境を横切っている直線。そこをカットしたらガラスが取り扱いやすい大きさになった。
カットを続け、6枚の長方形のガラスが取れた後、各ガラスの各コーナーを斜めにカット。最後に角をグラインドして終わる。
尚、前回の試し切りの時には表、裏それぞれのガラスにマジックでガイドラインを引いたが、本番ではこのように片面のみにした。
参考までに切る手順は、
(1) スチール定規を当てにして、片面をガラス・カッターでカット(正確にはスコアー = 溝を付ける)。
(2) 裏返して反対面に入れたスコアーの線にピッタリ重なるように、もう片面をガラス・カッターでカット。
(3) 両面ともカットした後、折り取る側をガラス・カッターの端で軽くコンコンコンとタップ。裏返してもう片面も軽くコンコンとタップ。
(4) スコアー・ラインに沿ってスチール定規を下に入れ、スコアー・ラインの両側に上から同等の圧力をかけて、折る。(折れない時は無理をせず、裏返して反対面から先に折る。)
(5) 裏返して、もう片面も同様に折る。(注:1枚ガラスのようにパキッと折れる訳ではない。折ると言ってもスコアーの線が僅かに広がったように見える程度の時も多い。それで充分。真ん中のPVBシートでつながっているのでポロンと下には落ちない。)
(6) PVBシートはカッター・ナイフで切り取る。この際、1回で切ろうと思わず3回位繰り返して引いて切り取るつもりで。尚、PVBは必ず同じ側からカッターナイフを走らせる。切り取れるまで裏返さない。 (両側から切ると必ずズレが生じてカットが難しく、切り上がりも汚くなくなる。)
カットでおよそ形が出来たら、グラインダーで角を落とし、カーブに沿って仕上げる。
1枚完成。
不意に割れたり欠けたりしないように注意しながら、カットとグラインドでここまで仕上げるのに1枚2-3時間かかる。
おそらくプロでもレーザー光線でカットする特殊なツールを使わない限り平均1時間はかかるのではないか、と思った。
PSC(パシフィック・シークラフト)製フリッカでは長方楕円形(陸上競技場のトラック形)のブロンズ製ポートは1978年頃からオプションで使われ始め、83年後半から5年程はファクトリー・スタンダードになっていた。ところが89年になって長方楕円形は廃止され、長方形がスタンダードとなった。この変更はフリッカに限らず、PSCの全艇で軒並み実施されている。
ラミネート・ガラスをカットしてみて分かったが、長方形に変更した理由は他でもない、長方楕円形ではガラスの整形に時間がかかりすぎたためではないだろうか。(PSCにおける造船コスト削減の努力はポートに限ったことではない。例えばフリッカではほぼ同時期にギャリーとVバースの境に立ってマスト下のアーチを支える形になっているコンプレッション・ポストが、円柱形に細工を施したものから手間を省ける角柱に変更された点にも見て取れる。)
ガラスをブロンズ枠に嵌め込んだところ。
実際はグラインド中に何回も試着して様子を見た。
1枚1枚この作業の繰り返し。ブレイド・ライン(ロープ)のスプライスと同じで、根気のいる作業だ。
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尚、ガラスを折る時はガラスの細かい粒々が飛び散ることもある。言うまでもなくガラスの表面は傷付きやすい。ガラスをひっくり返す時など、ガラスを作業台に置く前に、必ず毎回ガラス自体、および作業台の上からガラスの粒や粉を綺麗に拭き取っておくことが肝要。
(写真はいずれもPSC製434艇中295番 Serenity 関係のものです。)
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