2008年11月18日火曜日

ミシガン州の自作フリッカ - そのハルとデッキ

昨日見たフリッカと同じミシガンの自作艇だが、ハルとデッキの結合部にはブルワークスがなく、代わりにトウ・レールが装着されている。

しかし何よりハウスの前面がなだらかに前へ延びて、フォアワード・ハッチがそこに仕込まれているのが目につく。




これはVバースの頭上スペースを確保するためだろう。通常のフリッカではコンパニオンウェイを降りてキャビンに入ればスターボード側にセッティー、その先にVバースと続き、開放観があるが、この艇ではNAVステーション、個室ヘッド、ハンギング・ロッカー、とそれぞれバルクヘッドで仕切られ、その先にVバースがある。頭上にスペースを確保してVバースの居住性を得るためにこの改造が必要だったのだろう。

ハルはストリップ・プランキングで、表裏両面にファイバーグラスを張ったもののようだ。目を引くのがハルの先端、ステムだ。PSC製フリッカに比べてステムが鋭利に尖っているように見える。



また意図的にカーブル・プランキング・ラインを施し板張りを擬したPSC製ハルと違ってのっぺらぼうだ。

こういうハル細部の変更やハウス前面の傾斜により、フリッカの 『木造艇』 を思わせるイメージがいくらか薄らいだかも知れない。が、バウスプリット下に付けたニー (knee) はいかにも木造艇だ。

船腹のラブ・ストレイクにはステンレス製レールが付けてある。ハル全体を真横から見た写真がなく、艇のシアー・ラインとハウスやコーミングなどスーパーストラクチャーのラインを確認できないのが残念だが、どうも1960年代に流行したレイズド・デッキのセイルボートたちのように、コックピット部分がグッと落ち込むブレイク・シアーになっているように見える。

スターンは一見変わりないが、ハルの後端上部がさらに一段低くなっているのが分かる。ぜひとも一度全体のシアーを確認してみたいものだ。







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=> 後日註: 約1年半後、やっと [シアー全体を見られる写真] が出た。当ページ上から3枚目の写真はポート・サイド(左舷側)の写真かと思っていたが、さにあらず。スターボード・サイド(右舷側)の写真だった。つまりシアーラインの高い方がコックピットだった。

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(写真はいずれもミシガンで建造中の自作フリッカです。)
www.yachtworld.com キーワード欄にFlickaと入れてサーチ・ボタンをクリック。(この自作艇は2006年PSC製とあるがPSC製にあらず。)

2008年11月17日月曜日

ミシガン州の自作フリッカ - そのバウ・プルピット

PSCが1998年にフリッカの建造をやめた後も新しいフリッカが生まれている。図面から自作している人たちのフリッカだ。中には完成したハルを売りに出している人や、艇全体を殆ど完成させながら売りに出さざるを得ない人もいる。

この艇はオーナー・ビルダーの健康上の理由で売りに出された。自作艇らしく、いろいろなアイデアが盛り込まれている。

バウ・プルピット。視覚的デザインのおもしろさもあるが、その機能性にも惹かれる。






左舷右舷にひとつづつ付けたバウ・ローラー。アンカーをバウスプリット、ボブステイ、ウィスカー・ステイに当てることなく揚げ下げできるように配置されている。

バウスプリット下の添え木(ニー knee)のパターンはプラットフォームの波型テーマに合わせてある。両舷のプラットフォーム・サポート用ステンレス製ロッドはアンカーが船体やスプリットに当たるのを防ぐ役目も担っているのかも知れない。


20フィート艇のバウに常置アンカー2本。しかしこの配置だとプラットフォーム上のスペースも確保され、ジブのテイク・ダウン時なども足場に困らない。







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プルピット: アンカー・ロード(anchor rode)を船艇に引き入れるところだからプルピット。英語の pull と pit を合わせて一語にしたもので、その時 l をひとつ落としてある (pulpit)。

日米を問わず、バウにあるものだけプルピット、スターン(コックピット後部)にあるものはプルピットに対応するものということでプッシュピットという人もいるが、それは正式名称ではない。スターンの場合はスターン・プルピットと呼ぶのが正しい。

(写真はいずれもミシガンで建造中の自作フリッカです。)
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2008年11月15日土曜日

シングルハンダーズ・パッケージ

PSC製フリッカには 『シングルハンダーズ・パッケージ』 なるものがある。ジブ・ハルヤード、ステイスル・ハルヤード、メイン・ハルヤード、+2本のリーフィング・ラインをすべてコックピットまで引いて、シングルハンドしやすいようにする、という仕掛けのことだ。

これがないからと言ってシングルハンドできないことは決してないが、あると便利。

マスト・ステップのオーガナイザー。この艇 『セレ二ティ』 ではスターボード側にブロック3個、ポート側に2個。


スターボード側は手前がメイン・ハルヤード、真ん中白いラインがステイスル・ハルヤード、奥がファースト・リーフのクリングル・ライン。

クリングル・ラインはブーム後端からブーム内を通り、こうしてブーム先端から出てくる。




(尚、カニングハム・ラインはない。リーフ用のアイはブーム先端クリングル・ラインの上に見えるフックにかける。このフックを使わない場合、ブーム先端から出たクリングル・ラインを予めリーフ用アイに通しておき、それからマスト・ステップ・オーガナイザーのブロックへ。これで理論的にはクリングルとカニングハムをコックピットから1本のラインでコントロールできる。これを 『シングル・ライン・リーフィング』 と呼ぶ。しかし実際的にはそうするとラインの運びがスムーズに行かない。アイはフックにかけるのが手早い。)

ブームのアフト・エンドの様子。グリーン・ラインがファースト・リーフのクリングル・ライン、レッド・ラインはセカンド・リーフのクリングル・ライン。



(いろいろ試した結果、リーフ時は水平方向の引っ張りだけをクリングル・ラインに任せ、垂直方向の引っ張りはクリングル/クルー・アイを通してブームに結ぶ約130cmの独立ラインを使用している。)

ポート側のブロック2個。手前はジブ・ハルヤード、奥はセカンド・リーフ・クリングル・ライン。デッキ・オーガナイザーで90度ターンしてコックピット方向へ向かう。



コックピットから見たポート側キャビントップ。内側がセカンド・リーフ・クリングル・ライン、外側がジブ・ハルヤード。ロープ・クラッチが付いているので内側のクリートをハルヤード用として使い、クリングル・ラインはクリートなし、外側のクリートは今アイドルになっている外側のアイを通してきたジブ・リーフ時のジブ・ダウンホル・ライン用として使える。


尚、スターボード側もキャビントップ・ウィンチはひとつだが、ロープ・クラッチが付いていないのでクリートは3本ある。

(写真はいずれもPSC製434艇中295番目 Serenity です。)
Flicka20_Japan

2008年11月14日金曜日

ワーム・ギア

フリッカのラダーはトランサムに付けたアウトボード・ラダー、そしてヘルムはティラーだ。PSC製434艇中、ホイール(舵輪)付きの艇はただのイッパイもない。400セット以上売れたブルース・ビンガムの図面や、雑誌 『ラダー』 掲載の図面から自作した艇でもホイール付きフリッカの記録は皆無だ。

ただノー’スター製20艇中イッパイだけホイール・スティアリングのフリッカがある。フリッカ史上この艇だけがホイール・スティアリングだ。その艇の名は 『スイート・ピー』 。

ホイール・スティアリングと言っても、ヘルムズマンが舵輪の後ろで操作する今日のチェイン駆動やワイヤー駆動式のホイール・スティアリングではなく、ワーム・ギアと呼ばれる物。

ワーム・ギアはティラーやチェイン/ワイヤー駆動式のホイール・スティアリングに比べて一般にコックピットが広く使える利点がある。





しかしワーム・ギア一番の利点は舵軸についたギア(歯車)とホイールのギアが直接噛み合うので頑丈で故障も少なく耐久性があることだろう。日本の名艇、横須賀産の 『マリナー・ケッチ』 や 『フジ・ケッチ』 にも付いていた。

ただ舵取りのエンドからエンドまで(ハードからハードまで)が長い、というのが欠点と言えば欠点。つまり方向転換に舵輪を余計に回さなければならない。今では新艇に付けられることは全くなくなってしまった。

(写真はノー’スター製20艇中15番目 Sweet Pea です。)
⇒ フリッカ・フレンズ掲載の同艇:2、7、10、14-15ページ参照
⇒ フリッカ・データベースの同艇:Sweet Pea

シー・アンカー

外洋での嵐対策いわゆるストーム・タクティックとして最も良く実行される方法にヒーブ・ツーとライング・アハルがある。後者ではベア・ポール、つまりセイルは全部降ろしてハルだけで嵐の通過を待つ。いずれの方法でも艇を安定させるためシー・アンカーをウェザー(風上)の海に流す場合が多い。

これは 『パール(フライト・オブ・イヤーズから改名)』 のシー・アンカーのセット。







いつでも使用できるようにパラシュート・アンカー、ライン、そして回収用フロート(浮き)が一式、きちんと畳まれバッグに入っている。バウ・クリートとコックピット・ウィンチから取ったライン(ブライドル)から展開し、バウが波に対してヘッド・オンではなく斜めに向くようにする。

(注:フリッカのようなフル・キール艇ではこのように展開するが、フィン・キール艇では艇のスターンから展開するのが良いという。)

これはバウ・クリートからのラインをリードする専用チョックの拡大写真。上の写真で分かるように左上のレールに近いところに設置されている。




  * * *
シー・アンカーにはパラシュート式、コーン式などがあるが、前者でフリッカ・オーナーたちに信頼されているのが 『フィオレンティーノ』 ブランドの [パラ・アンカー]。上の写真のシー・アンカーもこれだ。

ただアメリカのコースト・ガードのテスト結果によると小さなドローグをラインにシリーズでつないだ連続ドローグ式のものをスターンから展開するのが最も効果的という。
[コースト・ガードのテスト]

特に大きい波がくずれるいわゆるブレイキング・ウェイブの時にはこのタイプでないと、いかなシー・アンカーでも波による艇の転覆を防げないという。

このビデオの艇はいずれのタイプのシー・アンカーも打っていないようだ。大きなブレイキング・ウェイブの力は圧倒的だ。
[ブレイキング・ウェイブによる転覆]

連続ドローグ式ではジョーダン・シリーズ・ドローグが知られている。ベアー・ポール艇のスターンから流す。直径5インチのドローグを100-200ヶ、ラインにノットで固定してある。
[ジョーダン・シリーズ・ドローグ]

(写真はいずれもPSC製434艇中、最後の434番目 Pearl、旧名Flight of Years、です。)
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2008年11月12日水曜日

ソーラー・パネル

エレクトロニクス機器を多く搭載している艇ではバッテリー充電を陸電やエンジンに頼らない方法として風力発電機やソーラー・パネルを付けている。

設置方法に頭を悩まさなくて済むロール・アップ式。










メイン・シートがスターン・プルピットの下段に装着してあるので、上のパイプをそのまま利用できた例。







この艇はシートが上のパイプにあるので後ろにステンレス製マウント・フレームを付けた。






プルピット両翼に各一枚を宛てた艇。それぞれ出力45wのモノクリスタリン・タイプ。電線はマリーン・グレイドの12番。両パネルからの電流は1個のレギュレーターを経て各バッテリーにつながれている。



規格ではフルに太陽に向いている時パネル一枚3.5アンペアの出力だが、実際はx2で7アンペアというわけには行かず、2枚合わせて約5アンペア。この好条件は一日平均4-6時間しかないが毎日艇に着いた時電圧を調べてみると両バッテリーともいつも14V以上あるそうだ。

設置方法の記録⇒ [6-7ページ、Punker Doodle]

これは以前出てきた 『モウジョウ』 のタワー・マウント。今まで35ノットの風の中、ビーム・リーチでもランでもがたつき音一つなかったそうだ。風力(400w)とソーラー(70w)合わせて、レイダー、オートヘルム、GPSプロッター2台、航海灯などの灯りをつけてミシガン湖を100マイル走った時、バッテリーはいつもフルに充電されていたという。




尚、この艇はスターンの船外機+タワー機器一式の重さに対抗するため、Vバース下の清水タンクは満杯に、フォアワード・ビルジには200ポンドの鉛をファイバーグラスで囲んで設置するなど、トリム(バランス)に腐心しているそうだ。

(写真はPSC製434艇中、上3枚はいずれも番数艇名未確認、4枚目番数未確認 Punker Doodle、最後は209番目 Mojo です。)
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キャビン暖房

フリッカにはギャリーに非圧力式アルコール・コンロが付いている。ひとつでも燃やすと短時間で結構暖かくなる。特別なヒーターは必要ないかも知れない。

(周知の様に、キャビンを閉め切ると一酸化炭素中毒の危険あり。いずれかのポートかハッチを少し開けて新鮮な空気を取り入れるべし。)

寒い地域ではこの 『フォース10』 灯油ストーブを付けている艇も多い。








キャビン・トップに小さい煙突用の孔を開ける必要が有る。つまり艇外に排気するので一酸化炭素中毒の危険性は格段に減る。だが室内の酸素を使って燃やすことに変わりなく、キャビンを閉め切るとやはり危ない。(尚、臭いが気にならなければ燃料は軽油でも可。)

取付法、写真、図は⇒ [フォース10]

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極端な寒冷地でも威力を発揮する 『エスパー・エアトロニック・D2』 を付けているフリッカも少なくない。ディーゼル・エンジンで走る長距離トラックにも広く装着されている⇒[エスパーD2カタログ]。これは軽油を燃やす暖房機で、稼動させる為に艇のエンジンがかかっている必要はない。というよりエンジンをかけなくても暖を取れるように開発されたもの。(周知の様にディーゼル・エンジンはガソリン・エンジンとちがい、ギアを入れ重い荷物を積み坂を登っている、プロペラを回して艇を推進させている、というように大きい負荷がかかっている時がエンジンに最適の状態。逆に負荷のない時、つまりアイドリング時はエンジンの消耗が最も激しく、排気も一番汚い。アイドリングは必要以上しないことが肝要。)

D2はエンジン・ルームに設置できるのでキャビン内に専用スペースは無用。熱交換で温めたきれいな空気だけを送り込む。キャビンの空気を汚さず安全だ。左の写真、黒色の一番太いホースが送気菅。キャビン内の一番低い(=空気が冷たい)場所、キャビン・ソール(床)のすぐ上に送るようにしてある。

欠点は運転中の音が結構うるさいことだろうか。

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他にフリッカ・オーナーたちのアイデア2つ。

個室ヘッド(トイレ)の後ろのロッカーの天井(つまりコックピット・シートの下側)にDC12Vから AC110-120Vへの700Wインヴァーターを付けた例。すぐ後ろのラザレット内に置かれた艇のバッテリーと直結している。ヒューズはつけてある。


インヴァーターの前面にスイッチに並んでコンセント(2ヶ)が付いている。キャビン内に置いたスペース・ヒーターのプラグを差し込んで暖を取る。エンジンをかけバッテリーを充電しなくても結構長い間使えるそうだ。

これはギャリーのアルコール・コンロの上に置く、自作のステンレス製熱拡散器。コンロからの熱い空気がパイプの中を通る空気を暖めて効率よく室内を暖めるらしい。タワー全体が火傷するほど熱くなるという。


ここまでやらなくても単にコンロで湯を沸かし、茶なりコーヒーなり飲むというのはどうだろう。

(写真はPSC製434艇中、上から番数未確認 Shanti、412番 Dulcinea、340番 Toucan、番数未確認 Sans Souci です。)
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Toucan